★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

顔に現れた痣2

各話表紙:聖女

「フィアーナ、お疲れさまでした。歩けますか? それとも運びましょうか?」

 聖堂から誰もいなくなるのを確認すると、ラミレスはフィアーナを心配そうに見つめながら言った。

「大丈夫、肩を貸してくれたら歩けます」

 立ち上がろうとするフィアーナをラミレスはそっと手助けする。

「わかりました。では私にしっかり掴まってください」

 なんとか立ち上がったフィアーナが歩きやすいように、ラミレスは彼女を支えた。

「ごめんなさい、ラミレス。先日のこともあるから、できるだけあなたに頼らないようにしようとは思うのだけど……」

 先日のこととは、ラミレスが聖女と親しすぎると難癖をつけられたことだ。

 フィアーナにとってラミレスを悪く言われることはなによりつらい。

(だから少しでも、頼りたくないのに……どうしてこんなときに限って痣ができてしまうのかしら……)

 情けなくて悔しくて、フィアーナの瞳から涙が一筋こぼれ落ちた。

「フィアーナ、泣いてるんですか? あんな取るに足らないことであなたが気を病む必要はありません」

「でも……」

「言ったでしょう? 私の頭の中はあなたを抱くことでいっぱいなんです。フィアーナと違ってむさい男のことなど微塵も覚えてませんし、考えたくもないです」

 冗談めかしてラミレスが笑うと、フィアーナの心も軽くなる。

「ありがとう、ラミレス」

 痣のできた目が痛いことに変わりはないが、ラミレスが傍にいるだけで痛みまで軽くなった気がした。

(ラミレス。あなたが好き。この世の誰よりも大切で、愛おしい人……今はまだはっきりと口にだすことはできないけれど、聖女としての役割が済んだら――)

 フィアーナは固い決意を胸に、ふわりと微笑んだ。

 いつものように、聖堂から近いラミレスの部屋に着くと、フィアーナはヴェールを脱いだ。

「痣はできてますけど、小さいほうですね。すぐ終わらせます」
「はい」

 と返事をしたフィアーナだが、ラミレスの端正な顔が近づくと鼓動が高鳴り始めた。

「フィアーナ、目を閉じてください。痣の大半は瞼にあるので」
「は、はい、ごめんなさい」

 言われるまで自分がラミレスを見つめていたことに気づかず、フィアーナは慌てて目を閉じた。

(ああ、よかった……今日はブラックラミレスにならないんですね)

 フィアーナが安心していると、瞼にそっとラミレスの唇が触れるのが感じられた。

 触れると同時に、目の痛みが嘘のように消えていった。

「終わりましたよ」

 目を開けるとラミレスの穏やかな微笑みがあった。

 フィアーナの心が春の日だまりのようにポカポカになっていく。

「ありがとう、ラミレス。わたしにとっての聖女はラミレスですね。あ、男の人だから聖人さまかしら?」

 なんだか楽しくてフィアーナはクスクスと笑う。

「ふふ、それは光栄ですね。今日はスケジュールに余裕もありますし、午後までゆっくり体を休めてください。なにか希望の飲み物や食べ物があれば、取ってきますよ?」

「じゃあ、レモン水をお願いします」
「わかりました、すぐ持ってきます」

 ラミレスはレモン水を取りに部屋を出た。

 それから、午後のお務めまでの時間を、フィアーナはゆったりと過ごすことができたのだった。

 

↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~