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顔に現れた痣

各話表紙:聖女 癒やしの聖女は~

 数日後。

 フィアーナは癒やしの聖堂でいつものようにお務めをしている。

 傍にはラミレスが控え、フィアーナを見守っている。

「もう心配はいりません。今日までよく頑張って来られましたね」

 フィアーナが目の前の病に苦しむ患者に労りの言葉をかけると、年若い娘はみるみるうちに目に涙を浮かべ、深く頷く。

 彼女の容態はとても重いものだ。

 瞼が握りこぶしほどに腫れ上がり、幾重にも重なった瘡蓋かさぶたからは今なお血がにじみ出ている。

 幾度となく膿が出て、そのたびに高熱を患った。

 また、そのたびに彼女は意識が混濁し生死の境を彷徨さまよってきたのだった。

 一年以上そのような生活を繰り返し、今日やっと聖女――フィアーナに会うことが叶ったのだ。

 これでやっと助かると思った彼女の瞳からは、滝のように涙がボロボロこぼれ落ちる。

(きっとわたしより二、三歳は若い……外に出ておしゃれや恋をしたい年頃なのに、顔にこんなものができて、本当につらかったでしょうね)

 フィアーナは慈悲の笑みを浮かべると、そっと娘の額に手を当てる。

 これまでと同じようにフィアーナの体が淡く発光し、目の前の患者を温かな光が包み込む。

 そして膨れ上がった瞼から光が弾けて、小さな光の粒となり宙に消えていく。

 それはまるで今日まで苦しんできた乙女の辛苦が、病とともに昇華していくようにも見える。

 いや、実際そうなのだろう。

 数分後、元の腫れも出血もない綺麗な肌に戻った娘は、自分の手鏡で顔を確認すると、その場で泣き崩れた。

 感謝と感動と喜びの涙だ。

「うっ……あり、ありがと……ござ……ます……っ、ありがと……っ……!」

 娘は嬉しさのあまり感極まって、フィアーナの膝にしがみつきながら礼を言う。

 嬉しくないはずがなかった。

 なぜなら娘はこの病のせいで離縁されていたからだ。

 失った婚約者は二度と戻らないが、それでも新たな希望を手に入れたのだ。

「こんなに泣いて……本当につらかったんですね。あなたに神の祝福があらんことを――」

 フィアーナは娘をそっと抱き寄せ、その額に祝福のキスを与えた。

 それはまるで一枚の宗教画のように高潔で、その場にいた誰もが慈愛の女神だと思うほどだった。

 もちろんラミレスも例外ではない。

 しかし、次の瞬間、それまでフィアーナを穏やかに見つめていたラミレスの表情に緊張が走る。

 ちょうどフィアーナと娘が離れると、ラミレスは手にしていた白いヴェールをフィアーナに被せた。

「日差しが強くなってきましたので、こちらをご利用ください」

 にこやかに告げるラミレスが、フィアーナにだけわかるようにコクリと頷く。

 フィアーナはそれを察し、微笑んだ。

「ありがとうございます」

 フィアーナは受け取ったヴェールを顔が隠れるように身に着けた。

(ああ……覚悟はしていたけれど、こんなに早くくるなんて……)

 ラミレスと前もって打ち合わせておいたのが功を奏した。

 今日は顔に深刻な症状がある患者が来るとわかっていた。

 だからラミレスが前もってヴェールを用意していたのだ。

 なぜならフィアーナが癒やしを施せば、患部が重症なほど同じ位置に痣ができることがわかっているからだ。

(残る患者はあと三人……今日は少なくて助かりましたね……)

 そうは思うもののフィアーナは動揺を隠せない。

 ラミレスがヴェールを用意してくれていたことに心底感謝した。

 もちろん目の前の患者には、自分がショックを受けたことなど微塵も悟らせない聖女を演じているのだが。

 目の表面だけだと思っていた痛みは、奥の方まで続いていた。

 先程癒やした娘はこの何倍も苦しんできたのだと思うと、フィアーナは胸が一杯になった。

 自分の体に多少穢れが溜まろうが、この何倍も苦しむ人々を救えるなら安い対価だと思う。

 なんとか残りの三人を癒やし終えると、フィアーナはぐったりしていた。

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~