★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

神との対話2

各話表紙:聖女

 すると、その呼びかけに応えるように、辺りが眩い光に包まれ、気づけばフィアーナとラミレスは白銀の光の中にいた。

<そなたの心の叫びが、私をこの地に呼んだ。聖女フィアーナ、私になにをさせたいのだ?>

 人影は全く見えないが、感覚的に上のほうから声は聞こえてくる。

「神さま……聞かずともおわかりではありませんか? 聖女は愛を知ってはいけないのですか? 愛しい人と結ばれてはいけないのですか? しあわせになってはいけないのですか?」

<そなたの言いたいことはわかっている。皆平等に愛し愛され、幸せになる権利がある>

「だったらどうしてわたしとラミレスは、こんなつらい思いをしなくてはならないのですか! 聖女の条件が純潔であることはわかってます。ですが、わたしもラミレスも聖女と神官である前に一人の人間なんです。そのうえ、わたしはほかの聖女たちより、長く聖女を務めてきました。その報いがこの結果だというのなら、納得できませんん!」

<そなたの言うことはもっともである。しかし、我にもすぐに動けぬ事情があったのだ。そなたも、ラミレスも本当によく聖女とその守護を務めてきてくれた。そのことに報いぬほど我は恥知らずではない>

「え……?」

 全否定されると思い込んでいたのに、意外な言葉が神から返ってきて、フィアーナは動揺した。

「それは、私達の願いをきいてくださるということですか?」

 少し混乱しているフィアーナの代わりにラミレスが問うた。

<そうだ。我にできる範囲内ではあるが、叶えられることは叶えよう。遠慮せずに心からの願いを口にするがよい>

「私はフィアーナが幸せであれば、ほかにはなにも望みません」

 ラミレスは一瞬の迷いもなく言い切った。

「なに言ってるの? もっと自分の幸せを願ったらいいじゃない……本当にラミレスは馬鹿だわ……」

 こんな滅多にない人生最大の好機にまで、自分の幸せを願うラミレスの深い愛に、フィアーナの瞳から再び涙がこぼれた。

「なんとでも言ってください。それであなたが幸せなら、なにも問題はありません。あなたのために惜しむものなどひとつもないですから」

 困ったように微笑むラミレスに、また涙を拭われる。

 ハンカチはすでに濡れてあまり涙を吸わなかったが、その気持ちがとても嬉しい。

「神さま……わたしの願いはラミレスと幸せに生きることです。そのためにはラミレスの功績がしっかりと評価されて、今みたいに批判を浴びることなどあってはなりません。ラミレスの多大な働きは神さまもよくご存知のはずです」

<ああ、よくわかっている。我もまたそなたたちを十年見守ってきたのだから。その願い、叶えよう>

「宜しいのですか?」

 さすがにラミレスも驚きを隠せないようだ。

<二言はない。これは、そなたらに肩入れしすぎた我の責任でもあるからだ>

「え……?」

 フィアーナとラミレスはお互い顔を見合わせた。

 神の責任とは一体どういうことだろう。

<聖女の任期は四年と決まっている。当然そなたたちも四年でその任を終えるはずだった……しかし、手放したくなかった。我は神でありながら、そなたたちの成長を見守ることが楽しくなってしまった。聖女という立場が本人の枷になっていることも勿論把握していた>

 意外な神からの告白に、フィアーナは言葉が出てこない。

 嫌われるでもなく、呪われるでもなく、逆に気に入られていたということだ。

 それは一介の人間からすれば、とても光栄でありがたいことだ。

<そうして見守っていくうちに、あっという間に十年が経った。解放してやらなくてはと思いつつ、そうできなかった……だから我の責任でもあると言ったのだ>

「ごめんなさい……知らなかったとはいえ、わたしは聖女の条件である純潔を勝手に……ごめんなさい……っ」

<そなたが謝ることはない。そしてラミレスの勇気ある行動に敬意を。どれほど酷い神罰をも受ける覚悟で挑んだこと、我はきちんと把握している>

「恐れ多いことです」

 神から直接労いの言葉をかけられ、ラミレスの瞳がうっすらと涙でにじむ。

 民衆だけでなく、国さえも敵に回しかねないとわかっていて、それでもラミレスはフィアーナと肌を重ね、愛したのだ。

 その覚悟はどれほどのものだったのだろう。

<そなたたちもよく知っているように、我がもっとも重んじるのが愛だ。自然に愛し合ったそなたたちを我が責める道理などない。特にそなたたちには歴代の聖女よりも苦労をかけてしまった。だから我はその責任を取らなくてはならない>

「それが、私達の願いを叶えるということなんですね」

 ラミレスの言葉に神が頷く気配がした。

 もっとも眩い光でその姿は見えないのだが。

<そうだ。すでに新たな聖女は誕生している。すぐに神殿にやってくるだろう>

「本当ですかっ!?」

 フィアーナは一気に笑顔になる。

 これでもう癒やしの力のことで悩むことはなくなった。

<本当だ。そなたたちの願いも今叶えよう。この十年間、よく頑張ってくれた……ありがとう>

 パチンとなにかが弾ける音がしたかと思うと、二人は地下牢とは別の場所に移動していたのだった。

 

↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~