★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

神との対話

各話表紙:聖女

 フィアーナはラミレスと分かれたあと、そのまま法王の部屋を訪れた。

「どうしたのかな、フィアーナ。それにその姿は……」

 法王はソファーに腰掛け読書をしていた。

「これは現場検証のために必要だったので……それはさておき、法王さまにお願いがあります」
「なにかな?」

 読みかけの本を閉じ、法王はフィアーナのほうに体を向けた。

「実はラミレスのことで……。法王さまもラミレスが心無い仕打ちを受けていることはご存知だと思います。そこでわたしから一つ提案があります」

「ああ、聞こう」

「神官たちの地下牢への出入りを禁止するか、法王さまの許可なしに立ち入れないようにできないでしょうか? わたしはこの目でラミレスがほかの神官から石を投げられるところを目撃しました。呪いをかけたことになっているとしても、ひどいです。だからといって、ずっとわたしが見張っているわけにもいきませんし、なによりラミレス本人が甘んじてそれを受けているのがつらいんです」

「その件に関しては私も頭を悩ませていたところだ。そして君の言うことはもっともだ。そうだな、明日にでも措置を取ろう。地下牢への出入りを禁じるほうが確実だと思うがどうかな?」

「は、はいっ! それでお願いします!」

 これでもうラミレスがひどい目にあうことがなくなったと、フィアーナは安堵の笑みを浮かべた。

「これでも申し訳ないと思っているんだよ……ラミレス一人に罪を負わせてしまったことを。君にもつらい思いをさせてすまない」

 法王の言葉にフィアーナはふるふると首を左右に振る。

「カールさまはなにも悪くありません。わたしとラミレスが神さまに逆らってしまったから……だから……」

(それでもわたしはラミレスを愛してる。これ以上自分の心を偽って聖女であり続けることは、もう限界だった……)

「ごめんなさい、カールさま……ごめんなさい……」

 フィアーナはやるせなくて、その場に泣き崩れてしまう。

「フィアーナ……君たちも悪くはない……ただ、愛しただけなのだから」
「うぅ……う……っ」

 法王に包み込むように抱きしめられ、フィアーナは嗚咽が漏れる。

「しかし皮肉なものだ……愛が最も大事だとする神の教えが、君たちをこのように傷つけることになろうとは……」

 法王の瞳も涙でにじんでいた。

 

 翌日。

 フィアーナが地下牢目指して歩いていると、すれ違う神官たちが労いの言葉をかけてくる。

「聖女さま、早く呪いが解けるといいですね」
「寧ろラミレスが呪いにかかればよかったんですよ」
「聖女さまの早い復帰を願います」

 自分はどう言われても構わないが、ラミレスが悪く言われるたびにフィアーナの胸がズキンと痛む。

(みんな真実を知らないいくせに、勝手なことばかり言う……ラミレスがいてくれたからわたしは聖女としてやってこれたのに)

 これ以上ラミレスへの批判を聞きたくなくて、フィアーナは地下牢まで一気に走り抜けた。

「ラミレス!」

 フィアーナは鉄格子に体を擦り寄せ、少しでもラミレスに近づこうとした。

「どうしました、そんな泣きそうな顔をして」
「……っ、なんでも、ないです。ごめんなさい……」

(なにしてるのわたし……ラミレスを元気づけなきゃいけないのに、気遣わせては駄目。ずっと牢に入っていてつらくないはずがない……)

「あなたは嘘が下手ですね」

 お見通しだと言わんばかりの笑みを浮かべたラミレスに、ハンカチで目元を拭われる。

 どうやら勝手に涙がこぼれていたらしい。

「ごめんなさい……あなたがこの先ずっと批判されて生きていくんだと思うと、悔しくて……――」

「ときにはしんどいと思うときもあるかもしれませんが、私はあなた以外の人間になんと言われても気にしません。一番理解して欲しい人がわかっていてくれれば、それで十分幸せなんです」

 ラミレスのフィアーナを見つめる瞳はとても暖かな光を宿し、その眼差しからは愛情がじんわりと伝わってくる。

 そんなラミレスの様子を見たフィアーナは、更に涙があふれて止まらない。

(わたしはこんなにやさしく愛を伝えてくれる人をほかに知らない……わたしもラミレスを愛してる。どうすればこんなふうに伝えられるの?)

「ラミレス……っ」

 自分からも愛していると伝えたいのに、言葉にならずもどかしい。

(ラミレス、あなたを愛してる。あなたにもっと触れたい。その力強い腕で抱き寄せて欲しい。あなたの肌を感じたい。あなたとひとつになりたい……!)

「さま……神さま……わたしの声が聞こえるなら、わたしの願いを、叶えてください……! お願いです、神さま……!」

「フィアーナ……」

 切ない願いを口にするフィアーナを見て、ラミレスはわずかに顔を歪めた。

 きっと自分の力不足が悔しいのだろう。

「今すぐわたしの前に現れて――!!」

 フィアーナは体中の力を振り絞るようにして、人生で最初で最後の叫びを上げた。

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~