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フィアーナの葛藤2

各話表紙:聖女 癒やしの聖女は~

 浄化を再開し始めたラミレスを眺めながら、フィアーナは言った。

 ラミレスの赤い舌が肌を這うが、特になにも感じない。

 色が濃いうちは皮膚の感覚が麻痺しているようだ。

 しかしラミレスの舌が肌を這う回数が増えるにつれ、フィアーナはもじもじと身を捩りはじめる。

「ラミレス、ごめんなさい」

 フィアーナが謝罪の言葉を口にすると、ラミレスが不思議そうに顔を上げる。

「なぜ謝る?」

「だって……こんな肌……見るのも気持ち悪いでしょう? それなのにラミレスはなにも言わずに浄化してくれるから……申し訳なくて」

(こんな見るからに不気味で、内出血みたいに青紫で気味の悪い色……小さな痣ならまだしも、これだけ広範囲だと視覚的にショックが大きい……ラミレスが浄化してくれている今でさえ、わたしは動揺してる)

「なんだ、そんなことか。初めて見たときは驚いたが、だからそれがなんだというんだ?」
「ええ!?」

「やっぱりお前にはきちんと伝わってないのか? 俺はお前の見かけだけ愛してるわけじゃない。全身全霊をかけて愛してるんだ。たった今お前が老婆になったって、俺は抱けるぞ」

「……馬鹿ね。お婆ちゃんになったわたしなんて、抱いたって気持ちよくな……っ」

 ボロボロっとフィアーナの瞳から涙があふれた。

 もうどうにも我慢できなかった。

 どんな自分も受け入れてくれるラミレスの深く強い愛に胸を貫かれた。

 真摯な深い想いが胸の奥まで突き刺さり、一生引き抜けそうにない。

 ありえないほどに心がじんじんと震えて、痺れて、強烈な雷に撃たれてしまったかのようだ。

 熱くて、痛くて、苦しい。

 普通ならこんな苦しいのはお断りだ。

 それなのに、少しも不快だとは感じず、この衝撃をフィアーナはじっくり心に刻みつける。

「どうした、苦しいのか?」
「わたし……っ」

 思わず本音を口にしかけて、フィアーナは慌てて両手で口を覆うと、ふるふると首を左右に振った。

(……あぶな、かった……聖女なんてもう辞めたいって、言ってしまうところだった……!)

 フィアーナはゾクリとした。

 感情に流され、とんでもないことを口走ってしまうところだった。

 フィアーナが望めばラミレスは躊躇することなく彼女を抱くだろう。

 しかしそれは絶対してはならないことだ。

(純潔を失えば、誰が困ってる人々を救うというの? 癒やしの力でしか助かることがない人々の希望を奪ってしまうことになる……そんなことは、絶対にしてはいけない――)

 だが、そう思う一方で本音に逆らい、ラミレスを受け入れることができない自分が酷く許せない。

(ただの娘に戻って、ラミレスの気持ちを受け入れられたら、どんなに幸せだろう……――)

 フィアーナとて一人の女性だ。

 常に自分の傍にラミレスのような魅力的な異性がいれば、幸せな恋愛を想像しなかったわけではない。

 聖女付きの神官でなければ、ラミレスは今頃神官長クラスまで出世していたことだろう。

 何度か昇進の話はあったようだが、フィアーナのためと彼はすべて断ってきた。

 それは決して聖女のためではなく、フィアーナという一人の人間という意味でだ。

 実際ラミレスに確かめたことはないが、彼の生き様から安易に想像できた。

 ラミレスはフィアーナの幸せのためにならないものは、バッサリと切り捨てることができる非情さを持っている。

 だが、その非情さもフィアーナの意思にそぐわない場合、発揮されない。

(ラミレスは、いつだってわたしの意思を尊重してくれる……その想いに、なんの不安もなく、微塵の後悔もなく応えられる日が来るのかしら……?)

「フィアーナ、お前の気持ちはわかっている」

 大量の涙を流すフィアーナの様子を眺めていたラミレスだったが、それとなく察したのだろう。

 いつの間にかラミレスの顔が至近距離にあって、フィアーナの涙を彼は唇で受け止めた。

 涙が中々止まらないフィアーナの頬に、やさしいキスの雨が降り続けた。

 

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~