★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

いつもと違う朝2

各話表紙:聖女

「呪いと言っても、実際にかけるわけではない。そう身構えずとも大丈夫だ。振りだけでよいのだ」

「つまり演じるということですね……話がよく見えませんが」
「そうだ。そしてそのためにラミレスは自ら牢に入ることを選んだ」
「な、んですって……!?」

 フィアーナは一気に凍りつく。恐怖と驚きで体が氷のように硬くなった。

「待ってください、なぜラミレスが牢に入らなくてはならないのですか!?」
「彼が言うには、『聖女に呪いをかけた罪』だそうだ」
「呪いなんて、かけられていませんっ!」

「ああ、わかっているよ。フィアーナ。……なにしろこの話を持ち出したのは、ラミレス本人なのだから」

「そんな! 失礼しますっ」

 フィアーナは勢いよく席を立ち、法王の部屋を飛び出すと地下牢に向かう。

 そんなフィアーナを法王はやわらかな笑みを浮かべ見送ったのだった。

 

 フィアーナは神殿の地下牢目指して全力で走る。

 人生でこれほど必死に体を動かしたことはないのではないか、というくらい髪を振り乱し駆けていく。

 そのあまりの必死な様子に、すれ違う神官たちが目を丸くした。

 地下牢の入り口についたフィアーナは完全に息が上がっていた。

 なりふり構わず走ったので、喉が痛いほどだ。

 フィアーナは必死に息を整えながら、牢の見張りに歩み寄る。

「神官……神官ラミレスはどこですか?」

 フィアーナの鬼気迫る様子に、見張りは驚きながら「一番奥の個室です」と教えてくれた。

 フィアーナはまだ整わない呼吸に苦しさを感じつつも、一気に地下牢の奥を目指して走った。

 等間隔に並ぶ鉄格子の先に、見慣れた姿があった。

「ラミ、レス……」

「フィアーナ、そろそろ来る頃だと思っていましたよ。そんなに息を乱して、大丈夫ですか?」

 いつもと変わらぬ穏やかな笑みを向けられ、フィアーナの胸はギュッと締めつけられる。

「なんで……? どうして、こうなるの? 守りたかったのに……っ」

 フィアーナは鉄格子の前でがくりと崩れ落ちた。

「フィアーナ、そう落ち込まなくても大丈夫ですよ。投獄と言っても軟禁とほぼ変わりませんから」

「なに言ってるの? 大丈夫なわけないじゃない!」

 フィアーナはガバっと起き上がると、鉄格子を力任せに揺らした。

 しかし彼女の非力さではびくともしなかった。

「ふふ、そんなに心配してくれるなんて、嬉しいです」

 ラミレスは牢の中でクスクスと笑う。

 それから、入口付近にいる見張りに聞こえないように、声を抑えて話しを続ける。

「法王から聞いているでしょう? 私はあなたに呪いをかけた罪でここにいるのです。それはもう聖女自身ですら解けない大変な呪いです。こんな呪いを解けるのはきっと新しい聖女くらいのものでしょう」

「なに暢気なこと言ってるの? 頭おかしくなっちゃったの、ラミレス?」

 フィアーナはラミレスの言動が理解できず、おろおろしている。

「私はいたって正常ですよ。頭もおかしくありません」
「でも、法王さまは、ラミレスが自分から牢に入ったって……」

「はい、そうですね。そしてあなたは、自分では決して解けない呪いをかけられた身です。しっかり演じきってくださいね」

「演じ……えっと……あれ? ごめんなさい、わたし少し混乱してしまって……」

「まあ、いきなり呪われていると言われたら動揺もするでしょう。あなたに相談もなしに決めて申し訳ありませんでした。もう一度順を追って説明します」

 考えがまとまらないフィアーナに、ラミレスはいつもの穏やかな笑みを向けた。

 

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~