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いっときの休日2

各話表紙:聖女 癒やしの聖女は~

 ラミレスがバターロールを食べる様子を、フィアーナはソワソワしながら見つめる。

(一応味見はしたけど、どうかしら?)

 そんなフィアーナにラミレスはふわりと微笑んだ。

「美味しいですよ、とても。昔を思い出しますね」

 フィアーナはパッと笑顔になる。

「よかった! そうですね、あの頃が懐かしいです。毎朝ラミレスを必死に追いかけていました」

 当時を思い出しフィアーナはクスクスと笑う。

「今だから白状しますが、あなたが走ってくるのがわかるとわざと早歩きしてました」
「ええ!? そこは普通ゆっくり歩くものじゃないんですか?」

「だって毎朝必死に走ってくるのが、あまりにも可愛くて。もう少しだけ長く必死なさまを見ていたくて、ふふ」

 ラミレスが本当に楽しそうに笑うので、フィアーナもつられて笑ってしまう。

「もう、ラミレスって実は意地が悪かったんですね?」
「すみません、毎朝頬を真っ赤にしてくるあなたは、それはそれは可愛かったですよ」

 ラミレスの心からの笑顔にフィアーナは安心する。

 いつも自分のために動いてくれるラミレスは、常に気が張っているに違いない。

 だからほんのいっときでも、気を抜いて楽に過ごしてほしいとフィアーナは思う。

「まあ、ラミレスが嬉しかったのならそれでいいです。でも、そのお陰で今になっても自然にパンを焼けるのはありがたいです。……もし聖女の役割が終わったら、わたしはただの平民に戻りますけど、またあなたにパンを焼いて持っていっていいかしら?」

「ええ、もちろんです。というか、あなたが聖女でなくなったら、わざわざそんなことしなくても、一緒に住めばいいでしょう?」

「え?」

 フィアーナは予想外の言葉に、ラミレスを見上げた。

 そんなことは考えたこともなかった。

「私の独占欲の強さはご存知かと思いましたが。もう、ずっと前から考えていましたよ。あなたと二人で暮らしたいと」

「ふたりで……?」
「ええ、嫌ですか?」

 フィアーナはふるふると首を横に振る。

「生活資金は貯めてあります。いつでも家を買えますし、護衛だって雇えますよ。あなたに不自由はさせません」

「……そんなこと、考えてくれていたの?」

「こんなのは当たり前です。あなたを幸せにするのは私です。他人などに任せておけません」

 そう話すラミレスは、とても慈悲深い眼差しをフィアーナに向ける。

 きっと一言では言い尽くせない想いがたくさんあるのだろう。

「でもラミレス……わたしは聖女でなくなったら、ただの女の人になってしまいます。あなたにそこまでしてもらう価値なんて……」

「私はこれまで何度か口に出してきましたよね? あなたが聖女でなければよかったのに、と」

 ラミレスの言葉にフィアーナは瞠目する。

 確かにそうだった。

 皆が聖女を必要としていても、ラミレスだけは違った。

「私はずっと『聖女』ではなく、フィアーナを見守ってきたんです。神官としては聖女に仕えてきましたが、それ以外は全部一人の人間としてあなたに接してきたつもりです」

「ちょ、ちょっとまってラミレス。なんだかさっきから、プロポーズのように聞こえるわ……」

 フィアーナは動揺のあまり口調が乱れ、頬が火照ってきた。

「そう受け取ってもらっても構いませんが、ちゃんと別でさせていただこうと思っています。今はまだ、時期ではありませんから」

「そっ、そそそ、そうよねっ! いくらなんでも早すぎるわ」

 なぜか焦りつつもフィアーナはほっとする。

「ああ、でも。誓いのキスの予行演習だけしておきましょうか」
「え?」

 瞬く間にお互いの唇が重なった。

 ――予行演習のキスは、バターロールの味がした。

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~