★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

新しい家

各話表紙:聖女

「名誉聖女って聞いてもいまいちピンとこなかったですけど、聖女の相談役って感じでいいのかしら……」

「はい、その解釈であってると思いますよ。神殿から提示されたことは、聖女から相談があれば任意で応じることと、出入り自由であること。あとは祭事に同席すること、まあこれも任意となっていますが」

「一応お給料も支払われるし、今までみたいに神殿に通うべきかしら?」

 穏やかに会話を続ける二人を乗せた馬車が、神殿から街へ向けて走る。

 任命式が済むと、寄りたいところがあるとラミレスに言われ、こうして馬車で移動しているというわけだ。

「あなたのしたいように、でいいと思いますよ。なにかあれば神殿から連絡が来ると思います……私としては毎日あなたの顔をみたいですが」

 フィアーナの実家をすぎて、少し行った辺りで馬車が止まる。

「着いたみたいですね。あなたが気に入ってくれるとよいのですが」

 先に馬車を降りたラミレスに手を差し伸べられる。

 その手を取り、馬車から降りたフィアーナの目の前には、貴族の屋敷を思わせるものが建っている。

「貴族に会いに来たんですか?」
「いいえ。あなたから見てどうですか、この屋敷は」

 ラミレスに問われ、フィアーナは屋敷全体を見回す。

 紺色の屋根に白い壁、しかも二階建てだ。

 広い庭には背の高い木が生い茂り、遠目には花壇も見える。

 扉の装飾も繊細に施され芸術品のようだ。

 ほかにも色々目を引く部分があり、フィアーナはひと目でこの屋敷が気に入った。

「ただ豪華なだけの屋敷じゃないんですね。日当たりのよい南側に花壇があるのも素敵だと思います。窓も沢山ついていて、風通しもよさそう。とても素敵な屋敷だと思います」

「今日からここがあなたの家ですよ」
「え……?」

「以前あなたと話したでしょう? そろそろ二人で住みたいと。この屋敷はあなたの実家からも近く、少し歩けば湖もある素敵な立地なんです。ずっと前からこの屋敷に目をつけていて、あなた好みになるように改築作業を進めていました」

「――!!」

 あまりの衝撃にフィアーナは絶句した。

 嬉しすぎて言葉にならない。

 だから、少しでもそれを伝えるために、フィアーナはラミレスにギュッと抱きついた。

「本来はあなたと相談して決めなくてはならないことですが、あなたを驚かせたいのと、一刻も早く二人だけの安全な場所がほしかったので……」

 照れくさそうに話すラミレスが愛おしくてたまらない。

 フィアーナはラミレスの胸に顔を埋めたまま動かなくなった。

「……しい……」
「はい、なんですか?」

 フィアーナの言葉をしっかり聞き取ろうと、ラミレスが問いながら、抱き返してきた。

「うれしい……っ……」

 フィアーナはそれだけ言うので精一杯だ。

 泣くつもりなどないのに、勝手に涙があふれてしまう。

 これでは顔を上げることができない。

(ラミレスはこんなにわたしのことを大切に想ってくれているんだ……ああ、わたし、なんて幸せ者なんだろう……こんなに最高な人はほかにはいない)

「ほっとしました。もし気に入らなかったらどうしようかと」

 ラミレスの言葉にフィアーナはフルフルと頭を左右に振った。

 たとえ好みでなかったとしても、ここまでされて嬉しくないはずがない。

 そこに至るまでの自分に対するラミレスの気持ちが嬉しいのだ。

 だからフィアーナは大きく心を揺さぶられ、感動の涙を流した。

「室内もきっと気にいると思いますよ。行きましょう、フィアーナ」

 ラミレスにやさしく促され、フィアーナは肩を抱かれるようにして、屋敷に向かう。

 玄関のドアを開けると、新しい家の香りがした。

 壁も床も、窓もカーテンも、すべてが新品だ。

 室内は白で統一され、家具は品の良い木製のもので揃えられている。

 目の前の靴をしまう棚を見てもそうだ。

 自然とフィアーナの足が動き、気づいたときには屋敷中を散策していた。

「とっても素敵な家ですね。特に台所が広くて使いやすく作られてるのが素敵……」
「はい、あなたが思い切りパン生地を叩きつけられるように、配慮しました」
「もう、ラミレスったら」

 冗談めかして言われ、フィアーナは少し恥ずかしい。

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~