★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

歯がゆい思い2

各話表紙:聖女

「そうですね、特に不自由はないと思いますが、毎日あなたの顔を見たいです」
「え、そんなことでいいんですか?」

「はい。会いに来てくれますか? 私の一番の心の支えになると思うので」
「わかりました。時間が許す限り毎日会いに来ます」

 すっかり落ち着いたフィアーナはいつもの口調に戻っている。

 それから、鉄格子の隙間から手を入れると、ラミレスの手を取り自分の頬に引き寄せた。

 ラミレスの大きくて温かな手のひらに心がホッとする。

(ああ……もっとこの手の感触を味わっていたい……ラミレスに思い切り抱きしめられたいし、抱きしめたい)

 そんなフィアーナを見つめるラミレスの瞳にわずかな熱と切なさが浮かぶ。

 きっと彼もフィアーナと同じ気持ちに違いない。

 そして、ちょうどその頃、地上では神殿内の広場で法王が『聖女は神官の呪いにかけられた』と発表していた。

 

 ラミレスが牢に入ってから数日は特に心配することなく過ぎていった。

 しかし一週間目にフィアーナが地下牢を訪れると事態が悪化していた。

「ラミレス、その顔の傷はどうしたんです!?」

 そう、ラミレスのこめかみの辺りに打撲とわずかににじんだ血が確認できたのだ。

 フィアーナは真っ青になってラミレスに駆け寄った。

 そんな二人の間を鉄格子が遮る。

「問題ありません。この程度は想定内です。女性はまだいませんが、若い神官の中には血気盛んな者もいますからね。私に喧嘩を売りに来たというか、弱い者いじめをしにきたといった具合でしょう」

 ラミレスは特に慌てた様子もなく、いつもと変わらぬ穏やかな笑みを浮かべている。

 数多の視線を生き抜いてきた彼にとって、この程度は獅子の尾にハエがたかる程度のことだった。

「そんな。ラミレスなら避けるのも反撃するのも簡単なのに、甘んじて受けるなんて……」

「ふふ、こういったことは反応したほうが負けなんです」

 なにごともなかったかのように、笑みを浮かべるラミレスを見ているとフィアーナは胸が痛くてたまらない。

 そっとラミレスのこめかみに手を伸ばす。

 傷の周辺に軽く触れるが、なんの変化も起きない。

「……どうして、一番欲しいときに癒やしの力が使えないのかしら……」

(今まで多くの人を癒やしの力で救ってきたのに、一番大切な人をすぐに癒してあげあげられない……わたしなんて癒やしの力がなければ、こんなに無力な娘にすぎないんだわ……)

 悔しさと情けなさで、フィアーナの青い瞳に涙がにじむ。

「なにを言ってるんです。あなたがこうして傍にいてくれることがなによりの癒やしです。この程度の傷なら数日で完治しますし」

「……ほかには? ほかの部分は大丈夫なんですか? わたしがいない間にひどい目にあってませんか?」

「大丈夫ですよ。鉄格子があるので、なにかしようにも石を投げる程度のことしかできませんからね。ベッドに隠れることもできますし」

「わたしは大丈夫じゃありません。ラミレスにこんなことをした相手に怒りを覚えます。許せません」

 フィアーナはラミレスのこめかみから手を引き戻すと、怒りに耐えるようにぐっと拳を握りしめた。

「ふふ、あなたは本当に可愛いですね」

「なに暢気に笑ってるんです! こんな傷をつけられて、しかも神官がこんなことするなんて、この神殿の将来が不安です」

「あははは」
「笑い事ではありません!」
「すみません。あなたが私のために怒ってくれるのが嬉しくて、可愛くて、つい」
「なんですか、それは。あとでよく効く塗り薬を持ってきます」
「それはありがたいですね」
「せっかく綺麗な顔に生まれたんですから、もっと大切にしてください」

 フィアーナが念を押すと、再度ラミレスに笑われてしまった。

 

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~