★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

歯がゆい思い

各話表紙:聖女

「まず一番大事なことは、あなたが聖女ではなくなったことを周囲に気取られないことです。そのために、あなたには呪いにかかってもらうことにしました。ここまではいいですか?」

「え、ええ……」

 ラミレスの問いにフィアーナはこくりと頷く。

 まだ正式に発表こそされていないが、聖女でなくなったという事実が公になれば、神殿は大変なことになるだろう。

「これであなたが癒やしの力を使えないことの理由ができました。そしてこの呪いがいつ解けるかですが、それは次の聖女が現れたら、ということになります。なにも不自然ではありませんね」

「で、でもそんなこと誰が信じるの……?」

「事実かどうかは問題ではありません。人々にとっては法王から発表されたというだけで、信頼に値するのです。ほぼすべての民衆が信じるでしょう。あなたは私に呪いをかけられてしまった、不幸な聖女というわけです」

「そんな……それじゃ、ラミレスはどうなるの?」

「ですから私はこのように牢に入る羽目になったのですよ。なにしろ聖女を呪った張本人という役どころですから……それに、どんな理由があるにせよ、あなたの純潔を奪ったことも事実です。その戒めも込めて私は牢に入ることを選んだのです」

 フィアーナの頬を涙が伝う。

 己の不甲斐なさが悔しくて情けなくてたまらない。

 どれほど助けたいと思ったかわからない。

 それなのに、ラミレスはいつもその上をいき、フィアーナを守るのだ。

「これなら誰も死ぬことなく、次の聖女を待つことができます」

「でも……これじゃ、ラミレスだけ貧乏くじ引いてるじゃない……。なにも知らない民衆たちはきっとあなたのことを悪者扱いする……そんなの、いや……」

「事をスムーズに運ぶにはこれしかなかったんです。勘弁してください。神殿にとっても、民衆にとっても、感情をぶつける対象が必要ですから。はけ口がなければ民衆の不満はやがて爆発します。そして、その矛先があなたや神殿に向かうというわけです。神殿は別に構いませんが、あなたを罵詈雑言で傷つけられるくらいなら、牢くらい進んで入ります」

「ばか……ラミレスの馬鹿……ばかよ……っ」

(わたしなんかのために、こんなことするなんて……ラミレスが牢に入ったなんて知ったら、おばさんもきっとすごく悲しむ……)

「頭脳には割と自信あるのですが、馬鹿と繰り返されると少々悔しいですね」

 やれやれといった様子で、ラミレスは力なく笑った。

「……もし、現れなかったら……次の聖女が、現れなかったら……」

 フィアーナの心は不安と絶望でもやもやする。

 もし聖女が現れなければ、ラミレスはずっとこのままなのだ。

 そんなことはとても耐えられない。

「現れますよ、確実に。過去数千年に渡り、聖女が出現しなかったことはありません。国は滅んでも信仰というものは残るものです。でなければこのリーデン・スフル教もすでに廃れているでしょう」

「どうしてそんなに落ち着いていられるの? これから先ラミレスは聖女に呪いをかけた罪人だって……民衆から批難を浴びることになってしまう」

「この程度の対価であなたと残りの人生を歩めるのなら、なにも問題はありません。人の噂も七十五日と言うでしょう?」

「……でも……」

「それに、一般人はこの地下牢には入ってこれませんし、あなたが思うほどの批難は私の耳には届かないと思います。だから安心してください」

 フィアーナはどうしても納得行かないが、ラミレスの決意の固さにこれ以上の話し合いは無意味だと感じた。

「じゃあ、あなたがここにいる間、わたしにできることはなにがありますか?」
(少しでもラミレスが快適に過ごせるようにしてあげたい)

 そう思いフィアーナはここで初めて牢の中を見回した。

 改めて見てみると、ラミレスの牢だけほかと違う。

 普通に神官たちが使うベッドやソファー、机、そしてやわらかなクッションまである。

 なるほどとフィアーナは思った。

 これでラミレスが軟禁と言っていた意味が理解できた。

 

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~