★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

肌に触れる唇

各話表紙:聖女

 三日後。

 一日のお務めを終えると同時に、フィアーナはラミレスの部屋に連れ込まれた。

「急にどうしたんですか、ラミレス」

 なにやら余裕のない様子で、ラミレスはバタンと乱暴に部屋の扉を閉めた。

 誰も入らぬように鍵までかける入念ぶりだ。

「お前の部屋まで行く時間が惜しい。右胸の下と、肩、背中、ふくらはぎ、腿の内側。同時に五ヶ所、痣ができてる」

 まさかのラミレスの発言に、フィアーナは瞠目する。

 ラミレスも動揺したのか口調が変わっている。

 フィアーナもすぐにはその事実を受け入れられず、わなわなと震えている。

 その口からは、掠れた声しか出てこない。

「うそ……この数日なにも出ないって、安心してたのに……」

(この十年間、痣が同時にできることなんて一度もなかった……それなのに、急に五つもできるなんて……)

 前例のない事実にフィアーナの顔が青ざめる。

 一日でこんなに痣ができるということは、更に増える可能性もある。

「心配するな。俺が全部浄化してやる」

 ラミレスの言葉に無意識に頷くフィアーナ。

 彼に誘導され、差し出された椅子に腰掛ける。

 ラミレスは眼鏡を外すと、フィアーナの正面に膝をついた。

「ふくらはぎから始めるぞ」

 フィアーナはもうラミレスの言葉に頷くことしかできない。

(どうしよう。まだ新しい聖女も現れていないのに。確実にわかる……わたしの聖女としての力が衰えてきている――)

 いつもなら恥ずかしい行為も、今のフィアーナにはそうと感じる余裕すらない。

 ラミレスのしなやかな指が足首を捉え、聖衣の裾を膝頭が見えるまで捲る。

 常に人前では聖衣を纏い、顔や手以外の素肌を晒すことがないフィアーナの肌は透き通るように白い。

 栄養状態もよく、きめ細やかで弾力がある。

 それでいて女性らしいやわらかさも持ち合わせた艷やかな素肌だ。

 ラミレスの青い瞳が、フィアーナのふくらはぎの中央に現れた痣を見据える。

 僅かに目を細めると、ラミレスはそっとやわらかなふくらはぎに唇を落とした。

 数日前と同じように、ラミレスの唇が触れた痣は泡が弾けるように、小さな光の粒になり宙に消えた。

「フィアーナ、大丈夫か?」
「……」

 ラミレスがなにか言っているが、フィアーナはどこを見ているかもわからないような視線を向け、こくりと頷いた。

「お前の太ももに触れるが、構わないんだな?」

 またフィアーナはこくりと頷いた。

 普段の彼女であれば、大騒ぎしているだろう。

 ラミレスの手がさらに聖衣を上に捲りあげ、フィアーナのやわらかな太ももが露わになった。

 仄かに肌から立ち上る甘い香りに、ラミレスは悩ましげな息を吐き出した。

 ずっとフィアーナのことを想ってきた彼は、目の前の据え膳状態な彼女の魅力に抗うことに必死だ。

 フィアーナの膝を少しだけ開くと、内ももにある痣が姿を現した。

 ゆっくりとラミレスの頭がフィアーナの足の間に埋まる。

 それから唇がやわはだに触れた。

 瞬時に泡が弾けるように、痣は光の粒になって消えた。

 しかし、ラミレスはそのまま白い太ももに頬を寄せる。

 フィアーナの肌を味わわずにはいられないようだ。

 そんなラミレスをフィアーナは無言でぼーっと見つめている。

(ラミレス、なんだかとてもつらそうな顔してる……)

 なにかに耐えるように固く目を閉じるラミレスは、妙に色っぽく感じられる。

 長いまつげが落とした影が、時折小さく震える。

(でも、とても綺麗……)

 自然とラミレスの頭にフィアーナは手を置いた。

 ゆるいパーマのかかった髪はやわらかくて、とても手触りがよい。

 何度か頭を撫でていたら、ゆっくりとラミレスが立ち上がる。

「背中をみせてくれ」
「はい」

 フィアーナは返事をすると、自ら服を脱ぎ下着姿になった。

 背中を見せるにはこうするしかないからだ。

 下着からは、やわらかな乳房が零れ落ちそうだ。

「生殺しだな……」

 ラミレスは邪な思いを振り切るように、熱い息を吐いた。

 自分の後ろに回ったラミレスが、長い銀髪を左右にかき分け、背中を露わにした。

 青紫の不気味な痣は、その存在を主張するように、フィアーナの背中の真ん中にできていた。

「フィアーナ……聖女でいるのは、つらくないか? お前はもう十分聖女としての務めを果たしてきた。通常の任期を大幅に過ぎていて、こんな痣まで作って、お前だけがどうして……」

 通常四年で終わる聖女の役割が、十年も続いていることにラミレスは不満があるのだ。

 本来であれば成人前に役割が終わり、普通の女性としてその後の人生を歩むのが当然だった。

「ラミレス、わたしは平気です。苦しむ人達はあとを絶ちませんから」

 僅かにフィアーナの言葉に感情が戻り始める。

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~