★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

不満をぶつける者たち

各話表紙:聖女

 さらに一週間が過ぎた。

 いつものようにフィアーナはラミレスのもとを訪れた。

 だが、今日は珍しくラミレスが落ち込んでいる。

「ラミレス、元気が無いようですけど、どうしたんですか?」

 そこでフィアーナはあることに気づく。

 ラミレスのトレードマークとも言える眼鏡がない。

「フィアーナ、来てくれたんですね」

 いつもより少し元気のない声と笑みにフィアーナは胸が締めつけられた。

「申し訳ありません。あなたから誕生日に頂いた眼鏡を割ってしまいました」

 ラミレスのこの一言でフィアーナはなにがあったのかを察した。

「また心無い輩にちょっかい出されたんですね……神の教えを説くものがこんなことをするなんて」

「さすがに今回は少しこたえました。あなたからの贈り物を台無しにされたのですから……」

「眼鏡より自分の体を心配してください。ここを出たら眼鏡くらいまたプレゼントしますから」

「はい」

 そう応えたものの、ラミレスの表情は晴れやかとは言い難い。

「今日は久しぶりにパンを焼いてきました。ラミレスのためだけに!」

 あまりにもラミレスの元気が無いので、フィアーナはあえて彼のためだと強調した。

「私のためだけに?」

「そうです。いつもより三時間早起きして最上級の小麦粉を捏ねて焼き上げました。あと、ラミレスが大好きなフルーツティーも。ここに来る直前まで氷で冷やしておいたから、とっても美味しいと思います」

「それは期待してしまいますね」

 ラミレスの穏やかな笑みがフィアーナに向けられる。

 やっといつもの彼の笑顔が見れたと、フィアーナは胸を撫で下ろす。

「ええ。一つ食べてみてください、きっと美味しいですよ」

 フィアーナは持参したバスケットを開け、ラミレスに焼き立てのパンを差し出す。

 まだ湯気を立ち上らせるパンはとても香ばしく、食欲をそそる。

「はい、いただきます」

 ラミレスは手を伸ばすとバスケットからパンを一つ手に取り、口元に運ぶ。

 そのままパクリと口に入れ、もぐもぐと咀嚼する。

 フィアーナはラミレスの様子を目を皿のようにして見つめる。

「お、美味しい、でしょう?」

 恐る恐るラミレスに尋ねるフィアーナ。

 一応味見はしてきたが、ラミレス本人に気に入ってもらえなければ意味がない。

「これは、練乳入りですね……とても美味しいです」

 ふにゃりと力の抜けた幸せいっぱいの笑みが、フィアーナに向けられる。

 予想以上に美味しかったようだ。ラミレスは次々とパンを食べていく。

「よかった……また作ってきますね」

「はい。なんだか昔に戻った気分です。毎朝私のためにパンを焼いてくれてましたね」

「そうですね。……あら、ラミレスちょっと袖を見せて?」
「あ……」

 フィアーナに手首を捕まれ、ラミレスは一瞬しまったという顔をした。

 フィアーナが袖を捲ると、痛々しい打撲の痕が現れた。

 どうやらずっとラミレスに対する嫌がらせは続いているらしい。

「軟膏を塗っておきますね」

 持参した平らな缶の蓋を開け、指先に軟膏をすくいとると、ラミレスの打撲部分にやさしく塗り込める。

「どうしてこうなってしまうの? わたしたちはただ愛し合いたいだけなのに……」

「フィアーナ、あなたに心配させて申し訳ありません。でも本当に大丈夫ですから。私は丈夫ですし、たまに法王さまも様子を見に来てくださいます」

「そうなんですか? 法王さまが来てくれているなら、こんなに心強いことはないですね」

 フィアーナは大きな安心感に包まれた気がした。

「ええ、ちょうどそういった場面に法王さまがやってきて、注意してくれました。その時の神官たちは三日間の謹慎処分にされたようです」

「まあ、そんなことが……」
(わたしももっと力になれるように頑張らなきゃ)

 このときフィアーナはある決心をした。

 

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~