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フィアーナとラミレス3

各話表紙:聖女 癒やしの聖女は~

 ラミレスはフィアーナを見つめたままポツリと呟く。

「俺はあと何回こんな思いをすればいい? お前が攫われるたびに不安になって、無事取り戻したらまたその不安に襲われる」

 ラミレスの切れ長の瞳に消せない葛藤が浮かぶ。

 憂いを帯びた眼差しに妙な色気が漂い、フィアーナは思わずドキリとした。

「……ラミレス……」

 こればかりはフィアーナにも答えられない。

 自分が聖女を辞められるのは、新たな聖女が現れてからだ。

 だがその時期は誰にもわからない。

「俺はいつも思ってる……お前が聖女でなければよかったってな」

 ラミレスは半ば諦めに近い笑みをふっと浮かべ、フィアーナから体を離した。

「ごめん、なさい……」
(わたしが聖女になってしまったから、誘拐される以外にもたくさん迷惑をかけてしまってる)

 フィアーナは申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 進んで聖女になったわけではないが、ずっとラミレスに我慢を強いていることは明らかだった。

 並の男であればすでに他の女性のもとへ行っていただろう。

「悪い……お前が謝ることじゃない」

 気が抜けたのか、ラミレスはベッドの端にストンと腰を下ろした。

 その後姿はどこか悲しげに見える。

(助けに来てくれたときは、あんなに強くて逞しいと感じたのに――)

 ラミレスは神官であるが、その身体能力は恐ろしく高い。

 だが、最初からそうだったわけではない。

 彼がここまで強くなったのには、ちゃんとした理由がある。

 それはフィアーナが聖女になったからだ。

 見目麗しいフィアーナは聖女でなくとも他国の金持ちや商人から目をつけられる。

 美しい生娘はそれだけで商品価値が高いのだ。

 そのせいで、フィアーナは何度も、何十回も攫われる人生を繰り返してきた。

 だが、そのたびに必死にラミレスが追いかけ、フィアーナを奪還してきた。

 はじめの頃は助けに来たラミレスは、死にそうな目に遭いボロ雑巾のようだった。

 それが回数を重ねていくうちに心身、技術ともに急速に成長していった。

 ラミレスには言っていないが、フィアーナは彼が神官のかたわら武術に励んでいることも知っていた。

 ふと、気づいたときにはラミレスの手には剣ダコができ、豆が潰れた後がいくつも見られた。

 ラミレスをこんなふうに変えてしまったのは自分なのだと思うと、フィアーナ申し訳なくてたまらなかった。

 何度も助けてもらっているのに、自分は彼になにも返せていないからだ。

 フィアーナは攫われてしまったとき、一つだけ気を付けていることがある。

 それはどんなに怖くても、痛くても、ラミレスが来たら笑顔になることだ。

 慣れないうちは、フィアーナは毎回どこに連れて行かれるかわからない恐怖で泣いてばかりいた。

 そのたびにラミレスは「遅くなってすまない」と謝ってきた。

 助けに来てくれだけでも涙がでるほど嬉しいことなのに、毎回助けに来たラミレスに浮かない顔をさせるのがつらかった。

 だからフィアーナはラミレスが迎えに来たら、笑顔でいることにしたのだ。

 先にこちらが笑顔を見せれば、ラミレスに罪悪感を持たせることもない。

(……だけど、またラミレスを落ち込ませてしまいましたね……)

 暫くラミレスの大きな背中を見つめていたフィアーナは、そっと白い手を伸ばすと、彼の背後からそっと抱きついた。

 

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~