★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

フィアーナとラミレス

各話表紙:聖女

 誘拐犯をラミレスが倒してから半刻後、フィアーナたちは神殿に戻っていた。

 深夜の神殿はしんと静まり返り、二人の足音が聞こえるだけだ。

「ねえ、フィアーナ。私は一体いつまで待てばいいんですか? 幼少の頃からあなたを想い続けて二十年、先日とうとう二十六になってしまいました」

「そうですね、いい大人になってしまいましたね」

 神殿の廊下を歩きながら、フィアーナはのんびりと答えた。

 フィアーナとラミレスは同じ土地で育った幼馴染だ。ラミレスは元々神官の家系に生まれ、フィアーナは平民の娘だ。

 近所に住んでいたので兄妹のように育った。

「フィアーナ。あなたはもう二十四歳です。このまま行き遅れになる前に、いい加減私に抱かれるべきだと思うんです……というか、とっとと抱かれろ。俺に」

「それが無理なのは、ラミレスもよくわかっているでしょう?」

 当然のことながら、聖女は純潔でなくてはならない。

 だから今日まで、ラミレスはフィアーナを抱くことができていないのだ。

 彼がフィアーナを抱くには、新しい聖女が現れない限り不可能というわけだ。

「知るか、そんなこと。俺にとってはお前が聖女だろうがそうでなかろうが、関係ない……」

 長い銀髪をかき分けられたかと思うと、首筋にやわらかなものが触れた。

 フィアーナにはそれがラミレスの唇だということは、すぐにわかった。

「ちょっと、ラミレス。やめてください」
(最近ブラックラミレスが頻繁に出てくるようになりましたね……どうしましょう)

 最初からこうだったわけではない。

 ラミレスはフィアーナが十八の時までは、普通に神官としてのみ関わってきた。

 だがフィアーナが十八になったのを境に、徐々に行動がエスカレートしはじめた。

 そしてフィアーナは、こういうときの彼をブラックラミレスと呼んでいる。

「ずっとお前を守ってきたんだ。これくらいの見返りはもらってもいいだろう?」

 柔肌に触れた唇から伝わる熱にゾクリとする。

 吐息混じりにささやかれると、くすぐったいような、もどかしいような気分になる。

 言葉とともに背後から抱きすくめられた。

「だ、だめ。ラミレス……っ」

 痕を残さないように微妙な強さで肌を吸われると、腰が疼いた。

 いけないとわかっていても、フィアーナは振り払えない。

「なにがダメなんだ。そんな声で言われても説得力ゼロだからな」

 フィアーナの首元に顔を埋めながら、ラミレスの大きな手が脇腹をゆっくりと這う。

 聖衣越しなのに手のひらから彼の熱が伝わってくる。

「ラミレス、もし誰かに見られたら……」
「ならお前の部屋に行く」

 ひょいとラミレスに抱き上げられ、フィアーナは神殿内の自分の部屋まで運ばれてしまった。

 部屋に入るとラミレスは迷うことなく寝室に向かい、そのままベッドに倒れ込んだ。

 フィアーナがラミレスに上から見下される体勢だ。

「どうしていきなりベッドなんですか、どいてください」
「どかない」

 警戒したフィアーナの言葉は秒で否定されてしまった。

 そればかりか、ラミレスは顔を寄せ覗き込む。

 フィアーナの鼓動が速くなる。

「お前はわかってるのか、俺がいつもどんな思いで攫われたお前を追いかけるのか――」

 ラミレスの青い瞳が切なそうに細められる。

(人を押し倒しておいて、そんな切ない目でみつめないで……怒れなくなってしまう)

「お前が怖い思いをしていないか、痛い思いをしていないか、体を穢されていないか気が気じゃない。いつも死に物狂いだ」

「それは、ごめんなさい……」

 好きで攫われているわけではないにしろ、こうやって毎回助けに来てくれるラミレスに対し、フィアーナは感謝と後ろめたさがある。

 自分が聖女になってからというもの、ラミレスはフィアーナが誘拐されるたびに、だれよりも早く駆けつけ助けてくれるのだ。

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癒やしの聖女は~
~桜猫*日和~