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夜会4

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

「ティナーシェさま、よろしければ私と踊っていただけませんか?」
「……はい、わたしの未熟なダンスでよろしければ」
「存じております。行きましょう」

 カーティスに報告がてら、ヴァイスも度々王の別邸を訪れティナーシェのダンスの様子を見守ってきた。

 お世辞にも上手とは言えないが、それを承知でヴァイスはティナーシェを誘ったのだ。

「はい。よろしくお願いします」

 ダンスホールはすでに多くの紳士淑女が踊っていた。

 そこへティナーシェとヴァイスが加わる。

 練習のかいあってか、スムーズに踊りはじめた――と思いきや。

「あ、わ、きゃっ……」
「ティナーシェさま、落ち着いて。あなたに踏まれるのは慣れていますから」

 何度かティナーシェのダンスに付き合ったヴァイスには、それはもう当たり前のことだった。

 それがわかっている分、ティナーシェの気持ちは軽くなったが、それでも申し訳ないと思ってしまう。

「はい」

 それから一曲踊り終えると、ティナーシェはがくりと肩を落とす。

 以前よりは回数が減ったものの、どうしても相手の足を踏んでしまう。

「ごめんなさい、ヴァイスさま。せっかく相手してくださったのに」

「いいんですよ、俺のことは練習台だと思ってこき使ってくれれば。はじめての緊張感の中でこれだけ踊れたら十分です」

 あえて練習台になってくれたヴァイスの気持ちが嬉しくて、ティナーシェは微笑んだ。

「ありがとうございます。もっと巧くならないとですね」

「きっと上達しますよ。俺は少し席を外すので、自由に過ごしていてください」
「はい」

 ヴァイスを見送ったすぐあとに、ティナーシェに向けて手が差し出される。

 その手の先には、一人の貴族の紳士が立っていた。

 歳はティナーシェより少し上くらいだろうか。

 少し遊んでいる感じに見える青年だ。

「一曲、お相手願えませんか? ご令嬢」
「あの、わたしはダンスがうまく踊れないのですが……」
「あ、曲がはじまった!」
「きゃっ」

 ティナーシェの返事が途中であるのに、青年に手を引かれダンスホールに連れてこられた。

「すみません、わたしダンスは下手で……」
「ほら、早く動いて!」
「え、あの……っ」

 ティナーシェの意思など無視して強引に推し進められる。

 必死についていこうとするが、慣れない事態に足がもつれ、ティナーシェはその場で転倒してしまった。

「ちっ、鈍くさいやつだな! さっさと立てよ!」
「きゃあ!」

 怒鳴りつけられ、ティナーシェは悲鳴を上げた。

 そのせいで会場中の視線が、ティナーシェと青年に注がれる。

 それまで流れていた演奏が中断された。

「早く立てよ! 皆見てるだろ!」

 ティナーシェは恐怖でもう言葉が出ない。体も動かない。

 その時だった。威厳のある重い声が響いたのは。

「愚か者! 年端も行かぬ若造が。その御方をどなたと心得る。汚らわしいて手で触れるでないわ」

 声の主は初老の男性だった。

 誰かは知らないが学者のようでもあり貴族のようでもあった。

 肩まで届く豊かな白髪の上には帽子を被っており、口元から頬まで白い髭で覆われている。

 落ち着いた焦げ茶色の衣装が、彼の威厳をさらに引き立てていた。

「な、なんだお前はっ」
「とっととね」

 初老の紳士は青年をギロリと睨みつけ、地の底に響くような声で言い捨てた。

 あまりの威圧感に、青年はそそくさと逃げ出した。

「大丈夫ですか、女神さま……」

 初老の紳士の顔が、先ほどとは別人なほど温かな笑顔に変化した。

「ありがとうございます。でも、女神さまって……わたしはそんなたいそうなものでは」

「いいえ、あなたは女神さまです。あのとき、私を助けてくださった御恩は忘れておりません。……陛下、間違いなくこの御方でございます」

 初老の紳士は、ティナーシェの手を取り立たせてやると、カーティスに向けてそう言った。

 そこへちょうど騒ぎを見守っていたカーティスが現れる。

 予想外の王の登場に、その場にいた者たちがざわついた。

「そうか……」

 カーティスは慈愛に満ちた眼差しをティナーシェに向ける。

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~