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夜会

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

◆夜会

「私がただで君に家庭教師をつけるとでも? 私の妻になるということはこの国の女王になるということだ。それなりの知識がないお飾りを迎えるわけにはいかないだろう」

「それはそうですが、わたしはラーダと慎ましく生活できればそれで……元々ただの侍女ですし……」

(もしかしてわたし夢を見ているのかしら……常識的に考えてありえないもの)

「おねえちゃん、なにをそんなに悩んでるの? 王さまとおねえちゃんが結婚したら、ぼくすごく嬉しいな!」

 カーティスの膝の上でラーダはあっさり口にした。

 ダンスを終えたあと二人はふたたびラーダの部屋に戻ってきたのだ。

「ラーダ! そんな簡単に口にしちゃダメ! 恐れ多いことなのよ?」

「私がいいと言っているのだから問題ない。ラーダも私が兄になったほうが嬉しいだろう?」

「うんっ!」
「いい子だ」

 満面の笑みで返事をするラーダと、どうだと言わんばかりに得意顔のカーティスである。

 彼は完璧にラーダを味方につけていた。

「ず、ずるい……」

 思わずティナーシェの口から本音が漏れた。

「ずるくない。相思相愛な上になんの障害もない」
「わたしは王妃という器ではありません」

「やってみなければわからないだろう。その程度の理由で無理だというのなら、既成事実を作ってもいいんだぞ?」

「なんてことをおっしゃるんですか!」

 ティナーシェは頬を赤らめた。

「身を投げ出すほど私が好きなくせに、君が素直に認めないからだ」

 カーティスのこの発言は、ティナーシェが黒羽根の矢から彼を守ったときのことを指している。

「う……せめて、もう少し考える時間をください。これは即決できる問題ではありません」

「わかった。三日やろう。どうせ悩むだけ無駄だろうがな。……とっとと私の手に落ちればいいものを」

(本音が、本音が漏れています、王さま!)

「王さまでもうまくいかないことがあるんだね」
「ああ。誰かさんが素直になればすぐ解決するんだがな」
「うぐ……」

 カーティスの言葉に胸を抉られ、ティナーシェは力なく笑った。


 その翌日。王の別邸に朝一で現れる者がいた。

「早朝にすみません、ティナーシェさま。少々お話がありまして」
「ヴァイスさま、なにか緊急の用事ですか?」

 ソファーセットの一つに椅子を下ろしたヴァイスの前に、紅茶を出しながらティナーシェは尋ねた。

「ええ、まあ」

 ティナーシェもヴァイスの対面に座る。

「それで、なんでしょう?」

「ティナーシェさまは、以前ザールワースに来る途中で老人を一人助けられたとか」

「ええ。とてもやせ細っていて、ひどい仕打ちを受けていたようでしたので。大したことはできませんでしが」

「そうですか。彼はあなたのことを女神さまと呼んだそうですね」

「はい。大げさですよね。わたしが女神さまって。でも嬉しかったです。少しは役に立てたかなって……元気だといいんですが」

「なるほど、ありがとうございました。この質問は以上です」

 ヴァイスは紅茶の入ったカップを手に取り、香りを楽しむとなにかを思い出したように微笑んだ。

「あの、ほかにもなにかあるんですか?」
「ええ。こちらが本題です」

 カップをテーブルに置くと、ヴァイスの目が鋭くなった。

「ティナーシェさま、陛下のなにが気に入らないんです?」
「え?」

 なぜヴァイスからこんな質問を受けなくてはならないのだろうか。

「昨日、陛下の部屋に訪れた際、ひどく拗ねていたんです。理由を聞いたところ、あなたが正妃になるのを快諾しなかった事が原因だと判明しました」

「ええと、普通の反応だと思うのですが」

「そうですね。ですが陛下は非常にモテる御方です。近隣の姫たちは毎日のように手紙を送ってきて、必死で縁談を進めようとしてきます。それでも陛下は、あなた以外には見向きもしないんです。ほかの女性は目に入らないくらいに本気なんですよ。俺もあなたなら素晴らしい正妃になると思います」

「そうでしょうか……気持ちはすごく嬉しいのですが、わたしには荷が大きすぎて……」

 正妃になるということは、カーティスと同じくらいそれに相応しい人物にならなくてはいけない。

 ティナーシェは自分にはとてもそんなことはできないと思っている。

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~