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ティータイムと涙2

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

 ティナーシェは胸をドキドキさせながら、カーティスが差し出したケーキを口に入れた。

 一口大とはいえ、口の中に入れれば結構なボリュームだ。

 頬まで隠すように両手で覆い、必死にケーキを咀嚼し飲み込んだ。

 なんとか食べ終えたと一息つく暇もなく、次のケーキを口元に運ばれる。今度は苺をメインに使った可愛らしいケーキだ。

「まだまだたくさんあるぞ、ティナーシェ」
「あの、もう結構ですから、陛下」
「聞こえない」

 拒絶を表す満面の笑みで答えられ、ティナーシェはやむなく苺のケーキをもぐもぐと食べたのだった。
 すかさず三つ目のケーキが口元に差し出される。

「陛下、もう結構ですから」
「聞こえないと言っている」

 ここまでされてティナーシェはようやく気づいた。

 この若き王は、自分の名を呼んでほしいがために、このような手段に出たのだと。

「陛下……カ……カーティスさま」
「なんだ、ティナーシェ」

 ティナーシェが渋々名前で呼ぶと、カーティスは先ほどとはうって変わって、慈愛に満ちた穏やかな笑みを浮かべた。

「ケーキは自分で食べますから、もう結構です」
「そうか。ならこれは私が食べてしまおう」

 カーティスはそのまま自分でケーキをパクリと食べてしまった。

 あっという間の出来事である。

 ティナーシェはきょとんとした。名前で呼んだだけでカーティスがあっさりと引き下がったからだ。

 ともあれケーキの強要から解放されたティナーシェはいくらか気持ちが楽になった。

 ようやく自分からケーキを選び食べはじめた。

 昨夜のミルベリーの件を思い出し、なるべく酸味のない材料でできたケーキを選んで食べることにした。

 多少の酸味は平気だが、しばらく酸っぱい食べ物は口に入れたくなかった。

 自分で思ったりよりも少ない量しかケーキを食べられず、ティナーシェは少し損した気持ちになった。

 もっとじっくりとそれぞれのケーキを味わってみたかった。

(でもここにいる間は、また色々と食べる機会があるかもしれないわ)

 やがてお茶会がお開きになり、ティナーシェが自室を目指して歩いていると、後ろから侍女のエリザに声をかけられた。

「ティナーシェさま、ブレイユ国からお手紙が届いています」
「わざわざ持ってきてくださったんですね。ありがとうございます」
「うふふ、どういたしまして!」

 エリザは嬉しそうに一礼すると仕事に戻っていった。

 

 自室に戻ったティナーシェは、さっそく開封し中身を確認する。

 差出人は王女だった。

 明らかに嫌な予感しかしないものの、目を通さないわけにもいかない。

 ティナーシェは暗い面持ちで、手紙の字面を目で追いはじめる。

 手紙には次のように書いてあった。

 どんな手段を使ってもいいので、最短で王と親しくなること。

 必要であれば色仕掛けでさらに誘惑し、心を掴んで王を油断させ闇に葬る――といったことが書かれていた。

 ご丁寧にも王女はこうも書き記していた。

 ――自分が心を許した相手に刺されて死ぬなんて、最高に惨めじゃない?

 と。ティナーシェは絶句しその場に立ち尽くす。

(なんてひどいことを考えているの……王さまの暗殺を切り出すまでは、普通にいい人だと思っていたのに……)

「姫さま……」

 今にも消えてしまいそうな声だ。

 無理もない。

 自分が仕える主人がこのような恐ろしい思考の持ち主だとわかり、ショックを受けないほうがおかしい。

 そしてティナーシェはその日一日ずっとすっきりしない気持ちで過ごしたのだった。

「そろそろ寝る時間ね」

 ベッドに腰を下ろしたティナーシェだが、とても眠る気になれない。

 礼儀作法の講義の間は少なからず忘れることができていたが、どうしても昼間届いた王女からの手紙が頭にちらついて離れない。

(運動というほどではないけど、少し散歩してこよう。そしたら眠気も出てくるかもしれないし)

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~