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ティータイムと涙

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~


◆ティータイムと涙

 朝食とその日最初の礼儀作法の講義を終えたティナーシェを待っていたのは、木漏れ日の下でのティータイムだ。

 侍女のエリザの案内で向かった先は、城内にある庭のひとつだ。

 大樹が四方八方に枝葉を伸ばし、絶好の避暑地となっている。

 大きな木漏れ日の下には白い丸テーブルが三つ並び、それぞれ四人ずつ座れるようになっている。

 すでに二つのテーブルは埋まり、王のいるテーブルだけは三人分の椅子が用意されている。

 そして一人分空席になっていた。

 ティナーシェが来るのがわかると、カーティスがこちらだと誘導するように片手を上げた。

 これでティナーシェの座席は決定してしまった。

(なんだか気恥ずかしい……朝に会ってからあまり時間が経ってないからかしら?)
「お招きいただき光栄でございます、陛下」

「よく来たな。肩の力を抜けと言っただろう? ……そうだな、普段は陛下と呼ぶのは禁止にしよう」
「ええっ!? そんなの困ります!」

 ティナーシェの驚きとは逆に、カーティスは楽しそうだ。

 そのカーティスの隣に座っている側近のヴァイスは、またはじまったといった様子で静観する。

「私のことは名前で呼ぶように。それ以外は返事はしない」
「そんな……!」

 思わずティナーシェは同じテーブルの他の者に助けを求めて視線を巡らしたが、誰一人として応じない。

(急になにを言い出すの、この王さまは! わたしなんかが名前を口にするなんて、恐れ多くてとても……)

「突っ立ってないで座れ。それとも立食形式が好きなのか?」

 カーティスの言葉は命令形ではあったが、その口調は強制ではなく、とても優しいものだった。

「……失礼します」

 ティナーシェはおずおずと席についた。

 目の前には淹れたての紅茶と、一口大の可愛いケーキが白い陶器の皿に花咲くように並ぶ。

 どのケーキも色鮮やかで見た目も美しく、食べるのがもったいないくらいだ。

「これで全員揃ったな。ではティータイムとしゃれこもう。みんな好きに味わってくれ」

 カーティスの掛け声で木漏れ日の下でのティータイムがはじまった。

「…………」

 皆が極上のスイーツに舌鼓を打つ中、ティナーシェは一人生きた心地がしない。

 なぜ行儀見習いとして城に来たばかりの自分が、このようなお茶会に呼ばれるのかまったくわからない。

 そのうえ、王には名前で呼ぶように言われ、甘いお菓子を味わう余裕などない。

「ティナーシェ、君にまだ紹介していなかったな。こいつは私の一番の側近でヴァイスという。若くして大臣の跡を引き継いでこの国の財政を管理してくれている。少々口うるさいのが玉に瑕だな」

「口うるさいとは失敬な。陛下のためを思ってご忠告差し上げているだけです」

 ヴァイスは王であるカーティスより少し背が高く、長い髪を後ろで緩い三つ編みにしている。

 カーティス同様紺色の髪だが少し明るい。

「ただいま紹介に預かったヴァイスと申します。陛下に意地悪されたらいつでも俺に言ってください。懲らしめてやりますから」

 ヴァイスの発言に驚いたティナーシェは、思わず両手で口元を覆った。

「な? うるさいだろう?」
「え、えっと……」

 カーティスに同意を求められたが、肯定してもいいものかとティナーシェは焦った。

 この王と大臣は今までティナーシェが見てきた主従関係とはまったく違う。

(王の命令は絶対で、逆らってはいけないもののはず……わたしの国で大臣がこんな発言をしたら、きっと絞首刑だわ)

「ティナーシェさまが困っているではありませんか。陛下はすぐ人をオモチャにするんですから。ほどほどにしてくださいよ」

「言ってろ……ほら、ティナーシェこのチョコのケーキは絶品だぞ」

 ヴァイスの言葉を一蹴し、カーティスは皿いっぱいに並ぶ一口大のケーキの中から、ふんだんにチョコを使ったものを選んだ。

 それから、フォークに刺したケーキをティナーシェの口元に運ぶ。

「えっ、あの、自分で食べられます」
「私の差し出したものは食べられないとでも?」

 若き王はにこにこと笑みをたたえ、ティナーシェの反応を確かめている。

「ああ、もう……どうなっても知りませんよ」

 カーティスの隣で大臣のヴァイスは諦めの溜息を吐く。

「……い、いただきます……」

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~