★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

朗読と自覚5

各話表紙

 さらに距離が縮まり、二人の唇が触れ合った――かに思えたが、スレスレのところで軌道がそれた。

 そのままカーティスの唇はティナーシェの耳元に寄せられる。

 そして彼は次のように言う。

「警戒心がなさすぎる」
「……!?」

 淡い期待が見事に打ち砕かれたことと、予想もしない一言にティナーシェはキョトンとした。

 言うだけ言うとカーティスはすぐにティナーシェから離れた。

「こんなにノコノコと私の部屋にやってきて、襲われたらどうする?」
「え? カーティスさまはそんなことしません」

 ティナーシェは即答した。

 訳ありと知りながら自分の力になりたいと言ってくれた王が、そのようなことをするとは思えないからだ。

「即答か……私は異性として認識されていないのか?」
「いいえ。カーティスさまは男性としてとても素敵なかただと思っています」

 ティナーシェの言葉を聞いたカーティスは、嬉しさ半分虚しさ半分といった様子だ。

「そうか……。つまり私が言いたいのは、もう少し異性に対して警戒しろということだ」
「心配には及びません。わたしなんかが襲われるなんてありえませんから」

(だってわたしは本来ただの侍女で、今までだって一度もそんなことはなかったし、そもそも男の人と関わること自体ほとんどないもの)

「どんな無菌状態で育ってきたんだ、君は……」
「無菌?」

 どうにも意図を理解していないティナーシェの様子に、カーティスはわずかに苛立ったようだ。

「いいか、もし私が女に目がない王だったらどうする? 誰彼構わず手を出すような最低な奴だ。そしたら君なんて今頃私の子を孕んでいるぞ」

「なっ、なんてことおっしゃるんですか! それにそんなことになったら、カーティスさまだって只じゃすみませんよ?」

 ティナーシェの頬は熟れた林檎のように赤い。

「私は王だぞ。そんなのいくらでも揉み消せる。それだけの地位と権力を持っているんだ」
「……それは、恐ろしい、ですね……」

 ようやく言葉の意味を理解したティナーシェは青ざめた。カーティスはやれやれと溜息を吐く。

「だから君は警戒心が足りないと言ったんだ……」

 ティナーシェはそんなカーティスを見つめていたが、ふっと微笑んだ。

 それから、彼を殺さなくてはならない自分がいうのもおかしいが、ティナーシェはこう返した。

「カーティスさまは、やさしいですね。わざわざ教えてくださるなんて。やっぱりあなたは信頼に足る御方です」

「……」

 ティナーシェの言葉にカーティスは「そうだけどそうじゃない」と少し困ったように笑った。

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~