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朗読と自覚3

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

 カーティスの寝顔を見つめながらも、ティナーシェは胸のときめきが収まらない。

 それと同時に彼の寝顔を見ていられるこの時間が、とても幸せだと感じている。

 ――いづれ命を奪わなくてはならないとわかっていても。

 自分の膝で眠る王を見つめていると、幸せと切なさが混じり合い胸が苦しくなる。

 今日までカーティスと過ごしてきた日々が思い出される。

 謁見で髪に鳥の糞がついてると言われたこと。

 歓迎の宴で酔いつぶれてしまったこと。

 庭で蜂に襲われたとき助けてもらったこと。

 泣くときに胸を貸してもらったこと……ほかにもまだたくさんある。

 そして自分が訳ありだとわかっていても、力になりたいと言ってくれたこと――。

 本来であれば歯牙にもかけないであろうはずの自分に、カーティスは救いの手を差し出してくれたのだ。

 それがどれほどティナーシェの心を勇気づけてくれたことだろう。

 たとえカーティスのすべての言動が公爵令嬢としての自分に向けられたものだったとしても、本当に嬉しかった。

 しかし、嬉しさと同時に切なさと苦しさも増していった。

 公爵令嬢としてではなく、一人の人間として自分を見てほしいと思うようになってしまった。

 いや、女性として見てほしいと思うようになってしまったのだ。

 もう、ティナーシェは自分の気持ちを無視することができない。

 ずっと気のせいだと気づかぬふりをしてきたが、これ以上はもう無理だ。

(わたし……王さまが、好きだ……好きになったって、気持ちを伝えることなんてできないのに。国も身分も違う。想いが実らないことが確定しているのに、どうして……)

 そのときだった。
 カーティスが素早く起き上がったのは。

「きゃっ!?」

 いきなりカーティスが起き上がったので、驚いたティナーシェは小さな悲鳴をあげてしまった。

「ああ、驚かせてすまない。近くに人の気配がしたんでな、反射的に起きてしまった」
「え?」

 まったく気配を感じないティナーシェはキョロキョロと辺りを見回す。

 すると庭の入り口からヴァイスがこちらに向かってくるのが見える。

「もう少しゆっくりしていたかったんだが」

 近づいてくるヴァイスを見て、小さなため息を吐くカーティス。

 しかし、すぐにティナーシェの様子に気づいた彼はこう言った。

「また泣きそうな顔をしている。そんな顔をするくらいなら、さっさと私に相談したらどうなんだ?」

「気持ちだけ受け取っておきます。カーティスさまには関係のないことですから……」

 少し突き放すように言ったのは、これ以上好きになってしまえばつらいと自覚しているからかもしれない。

 それにもう、相談したとしても手遅れなのだ。

(だって、ここに来た時点でわたしは王さまを裏切る存在なんだもの……わたしは弟を生かすためにあなたを犠牲にするようなひどい人間だから)

 胸に逆巻く絶望と背徳感と諦めの感情を押さえつけるようにして、ティナーシェは必死に微笑んでみせた。

 そんなティナーシェの顔を見て、カーティスは一瞬はっとして、神妙な面持ちになる。

 それから慈愛に満ちた眼差しがティナーシェに向けられ、そのままカーティスの大きな手が彼女の頭を気遣うように撫でた。

「君が気丈に振る舞うほど、痛々しくて見ていられない」

 カーティスの言葉は、ティナーシェが無理をしていることなどお見通しだと言わんばかりだ。

(王さまの気遣いは嬉しいけど、わたしがここでは公爵令嬢だからなんだ。勘違いしちゃダメ)

 そこへちょうど、ヴァイスが来た。

「陛下、調査結果が届きました」
「そうか、早かったな。ティナーシェ、またあとで会おう。ではな」

 そう言い残し、カーティスはヴァイスとともに庭を去った。

 ティナーシェは二人の後ろ姿が見えなくなるまで眺めていた。

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~