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朗読と自覚2

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

「ミレーユさまが立ち入り禁止のところに、わたしなどが入っても大丈夫なんですか?」
「ああ。君は勝手に庭の花を別のものと植え替えたりしないだろう?」
「え……まさか、ミレーユさま……」

 ティナーシェの言葉に深く頷くカーティス。

 どうやらこの庭の花をミレーユは勝手に植え替えたことがあるらしかった。

 それも一本や二本ではない。

 その種類の花が植えられたブロックごとごっそりと植え替えていたのだ。

「それは、大変でしたね……」
「まあそういうわけだ。ミレーユには気を付けたほうがいい」

「はい。ところでカーティスさまは、どこか向かう途中だったのではありませんか? 足止めしてしまったのでは……」

 今更不安になりティナーシェが問うと、カーティスは小さく首を横に振った。

「少し休憩しに来ただけだ。なにかあればすぐヴァイスが呼びに来る」
「そうですか」

 本が手元に戻ってきて安心したが、このまま本を読み続けていいものか、ティナーシェは判断に迷う。

 本を読めば隣のカーティスを放置することになってしまう。

 物語の続きは読みたいが、そうするわけにもいかず、ティナーシェは童話集を繰り返しパラパラと捲る。

「続きが読みたいなら遠慮するな」
「ですが……」

 いくら本人にそう言われても、王を放置してこのまま読書する気になどなれない。

「そうだな、だったら続きから音読して聞かせてくれ。それなら私も退屈しない」
「わかりました」

 弟がまだ小さな頃から本を読み聞かせてきたティナーシェにとって、これはさほど難しくない。
 だから彼女はすぐに了承した。

 ティナーシェが本を読みはじめると、カーティスは一瞬驚き、ふっと微笑んだ。

 ティナーシェは自分では気づいていないが、彼女の声はとても聞きやすく鼓膜に心地よく響く。

 文章を読む能力にも長けていて、いつまでも聞いていられる。

 そんな彼女の才能を見つけた喜びに、カーティスは微笑んだのだ。

 ティナーシェが十ページほど読み進めたときだった。

「膝を借りるぞ」
「ひゃっ!?」

 カーティスがそう告げたときには、すでに彼の頭が自分の膝の上にあり、ティナーシェは飛び上がらんばかりに驚いた。

 驚いた拍子に思わず本を手放してしまった。

 しかしそれをカーティスが見事にキャッチする。

「私の顔に落ちてきたらどうする、しっかり持っておけ」
「も、申し訳……っ……!」

 カーティスから本を受け取ったティナーシェは小さなパニックに陥っていた。

(お、お、王さま、なにをしているんですか!? 膝枕ならわたしよりもっと気持ちいい人たちがいっぱいいるじゃないですか!)

 心臓は人生で初めてではないかと思うほどバクバクと激しく動き、顔だってきっと普段以上に真っ赤に違いない。

 そんな自分を間近で見られていると思うと、ティナーシェは恥ずかしくて死んでしまいそうだ。

「なにをもたもたしている。早く続きを聞かせてくれ。親子が別れたところからだ」
「あっ、は、はい……っ」

 ティナーシェは本を開き、続きから読みはじめる。

 だがその声には隠しきれない恥ずかしさがにじみ出る。

 必死に文字を目で追い、言葉を紡ぐが、正直それどころではないティナーシェには話の内容がまったく入ってこない。

 そんな彼女の必死な様子に、カーティスは度々楽しげに笑みをこぼすのだった。

 それから二十分ほど朗読を続けていたが、いつの間にかカーティスが寝ているのに気付き、ティナーシェは本を読むのをやめた。

「本当に、ねちゃった、の?」

 ティナーシェは自分の膝枕で眠る王の顔をまじまじと見つめる。

 ブレイユ国の王の寝顔でさえ見たことがないというのに、他国の王の寝顔を見ることになろうとは思いもしなかった。

(男の人なのになんて綺麗な顔をしているんだろう。王家に美男美女が多いのは当然としても、王さまはわたしが今まで見た中で、一番綺麗な人だわ)

 カーティスの規則正しい寝息を聞いていると、徐々に心が落ち着いてくる。

(きっと王さまとしての仕事が多くて疲れてるんだわ。起こさないようにじっとしておこう)

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~