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王からのお願い2

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

「行儀見習いで王の世話をしたと聞けば、公爵家も喜ぶだろう」
「そんな! 恐れ多くてとてもできません!」
「なぜだ? 君にとってなにか不都合でもあるのか?」
「……それは、ありませんけど……」
「では、お願いできるかな?」

 カーティスは期待の眼差しをティナーシェに向ける。

 なぜこんなに嬉しそうなのだろうと疑問に思いつつも、ティナーシェには断る理由がない。

「わかりました。謹んでお受けします」
「よし。では明日の朝ヴァイスに迎えに行かせる。またな」

 言うだけ言うとカーティスは行ってしまった。

「なんだったの、一体……」

(王さまの身の回りのお世話をすることになってしまった……目的を果たすためにはむしろ好都合だけど……)

 ティナーシェはカーティスが退室して、ようやく肩にかけられたストールのことを思い出す。

 きっとこの上質なストールはカーティスのものに違いない。

 ザールワース国ではロイヤルブルーは王家を象徴する色である。

 国民の王家への敬意の表れで、ずっと長い間王家の者しかこの色を身につけることをよしとしない風習があった。

 誰が強制したわけでもなく、それだけ民からの信頼が厚いことを示している。

「話が急すぎて返しそびれてしまったわ」

 ザールワースに来て日の浅い、しかも自国の民でもない自分にストールをかけてくれたカーティスの気持ちが、とても嬉しい。

 たとえそれが偽りとはいえ、公爵令嬢という身分だから与えられたのだとしても。

 肌触りのよいロイヤルブルーのストールを顔まで引き寄せると、ティナーシェはその感触にうっとりと浸る。

 頬に触れる柔らかな布地とぬくもり、そして仄かに香る上品な香りに心が和やかになる。

 しばらくストールを肌に感じたあと、ティナーシェは丁寧に畳んで机の上に置いた。

 明日から王の部屋へ行くときに返す予定だ。

 ティナーシェが穏やかな気持ちでストールを見つめていると、扉を叩く音がして侍女のエリザが入ってきた。

「ティナーシェさま、お手紙が届いております」
「ありがとうございます」

 手紙を受け取り微笑むと、エリザは一礼し退室した。

 手紙を裏返すと、ブレイユ国のものだとわかる封蝋で止められている。王女が好んで使うものだった。

 さきほどまで明るかったティナーシェの気持ちがズンと音を立てて沈んでいく。

 ペーパーナイフで封を切り手紙を取り出す。

 やはり差出人は王女で、王との関係がどこまで進んだか報告するようにと記されていた。

「…………」

 現状報告をするのは気が進まないが、ティナーシェは再び机に向かう。

 引き出しから返事を書くための便箋とインクを取り出し机に置く。

 素直な彼女は今日までの出来事をそのまま紙に書き記す。

 未だ王の心を掴むには至っていないこと、王の身の回りの世話をするのが決まったことを文字に綴った。

 手紙を書き終えたティナーシェは、白い封筒に綺麗に折りたたんだ手紙を入れ封をした。

 あとはこれを侍女のエリザに渡すだけだ。

「今の時間だと休憩室にいるかもしれないわね」

 自分も本来侍女として勤めてきたので、大体の時間配分はわかっている。この時間帯は夕食の準備を終え一息ついている頃だろう。

 ティナーシェは部屋を出ると、使用人たちの休憩室に向かう。

 そして自分の予想通りエリザはそこにいた。

「ティナーシェさま!」

 ティナーシェが休憩室に顔を出すと、すぐに気づいたエリザがこちらへ駆け寄ってきた。

「休憩中にごめんなさい。忘れないうちにと思って」

 少しばかりティナーシェが申し訳なさそうに話すと、エリザはティナーシェが手にした手紙に気付き頷く。

「これを出しておけばいいんですね?」
「ええ。あなたになら安心して任せられるわ」

 ティナーシェより先にエリザが手紙を受け取ろうと両手を差し出した。

 だからティナーシェは手紙をそっとエリザの手の上に置いた。

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~