10/24:雑記更新 10/23~:更新再開「吸血鬼と不良神父の溺愛情事」10/22:祝☆完結「癒やしの聖女は神官に体を狙われています」

庭での出来事2

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

 黒と黄色の警戒心を煽る色合いの人の拳ほどあろうかという大きな蜂が、不気味な羽音を立てて飛び回っている。

 ティナーシェの前から離れようとしない。

 ずんぐりとした体型で胴体は太く短い。

 どうやらこの大きな蜂はティナーシェを標的と定めたようだ。

 彼女の様子を伺うようにブーンブーンと威嚇するような羽音とともに、狙いをつけている。

 その尻の先には普通の蜂の何倍も大きな針が確認できた。

(に、逃げなきゃ!)

 目の前の蜂は恐ろしいが、逃げないと刺されるという最悪な結果が目に見えている。

 あんな太い針で刺されたら痛すぎて気絶してしまうかもしれない。

 ティナーシェは少しずつ立ち上がり、蜂に近づかれないようにそっと四阿を移動しはじめる。

 すると蜂もティナーシェに合わせて移動する。

「なん、で……」

 移動すれば蜂の気も逸れるのではと、わずかな期待を抱いたティナーシェだったが見事に打ち砕かれてしまった。

 じりじりと庭の入り口を目指して移動すると、蜂も同じ速度でついてくるのだ。

「お願い、こないで……どこか行って!」

 恐怖に震えつつも声を絞るが、蜂は立ち去る気配がない。

(逃げなきゃ! なんとかして逃げなきゃ、刺されてしまう!)

 ティナーシェは蜂に背を向けないように、後退るようにして移動する。

 徐々にその速度が上がり、蜂もピッタリとついてくる。

 恐怖でティナーシェの額に脂汗がにじみ、それまで順調に動いていた足が不規則に震えだす。

 しかしその間にも蜂は不気味な羽音を響かせながら距離を詰めてくる。

「やだ、どっかいって……きゃっ」

 普段着慣れないドレスがよくなかったのか、覚束ない足取りだったティナーシェはバランスを崩し倒れてしまう。

 その瞬間、蜂から物凄い殺気を感じたティナーシェは、恐怖に動かない体を呪いつつ絶望した。

 蜂は無慈悲に、一直線にティナーシェへ向かって加速する。

 その柔肌に針を突き刺すために。

「きゃあぁっ!」

 ズブリ、となにかが刺さる音がした。それを確認するのが怖くてティナーシェは目を開けることが出来ない。

(うそ、わたし、刺されちゃったの……? ショックでまだ実感がわかない……)

「おい、大丈夫か? どこか痛むのか?」

 不意に声をかけられ、ティナーシェはビクッと肩を震わせた。

「は、はち……ハチが……っ」
「ああ、蜂なら退治したぞ」
「え……」

 予想外の言葉にティナーシェは目を開ける。

 目の前には自分を心配そうに見つめる若き王カーティスがいて、そのすぐ近くに短剣の刺さった蜂が転がっている。

「え……?」
(どうして王さまがここにいるの? わたし、助かったの?)

 急展開にティナーシェの思考が追いつかない。

「運がよかったな。たまたま私が庭に居合わせたから君は助かった」

 どういうことかとカーティスの話をまとめると、自分は早起きした日はこの庭で読書をするのが日課になっている。

 そこに女性の怯えた声が耳に入り、様子を見ると蜂に襲われていた。

 だから助けたというわけだ。

「この前、巣ごと駆除したんだが……まだ生き残った蜂がいたようだ。私の不手際で危険な目に合わせてすまない」

「そんな……陛下が謝ることなんてなにも……」

「いや、君を行儀見習いとして預かっている以上、身の安全を保証するのは王として当然だ。ほかになにか問題があればすぐに言ってほしい」

 話しながらカーティスに手を取られる。

 自分より大きく力強い手の感触に、ティナーシェの脈がわずかに速くなる。

 そのままやさしく引っ張り上げられ、立たせてもらった。

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~