灸をすえる5

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

「おまたせ、しました」

 ドレスに着替えたティナーシェを見るやいなや、カーティスは満足気に微笑んだ。

「ああ、やはり私の目に狂いはなかった」
「大変良くお似合いです、ティナーシェさま」

 ヴァイスも称賛の声をあげる。

「どこから見ても麗しの姫君だな」
「からかわないでください……」

 ティナーシェが照れ隠しでそう言うと、カーティスとヴァイスが楽しげに笑った。

 それから間もなくブレイユ国王と合う時間になり、三人は城の奥にある庭園に案内された。

 手入れの行き届いた庭で、大きな木には鳥の巣箱が設置してある。

 庭園の入り口から少し進んだところに、人が縦に五人座れるくらいの長方形のテーブルセットが置いてあり、その席の一つにブレイユ国王が座っている。

 うっすらと白髪の混じりはじめた五十代の国王は、カーティスの姿を見つけると、軽く手を挙げた。

 中肉中背でほんの少しだけお腹が出ている。

 逆にそれが豪華な衣装と相まって、王として力強い存在感があった。

「久しいな、カーティス」
「前回会ったのは一年前だな、息災でなにより」

 国王とカーティスが再開の握手をする。二人の王は割と友好的らしい。

「皆、適当に座ってくれ」

 国王はにこやかに席につくように勧めてくれた。

 三人は、カーティス、ティナーシェ、ヴァイスの順に並んで座った。

「王よ、さっそく本題に入るが、今日私がここを訪れたのは……」
「よいよい、みなまで言うな、カーティス。王女のことなら私の耳にも届いているぞ」

「なら話が早い。今回の件に関して私はこれ以上は不問とする。王女の処遇もそちらに任せる。だが、二つ条件がある」

「なんだね?」

 国王はどこか楽しげだ。

「一つはティナーシェに正式に公爵としての地位を与えること。もう一つは、彼女は私がもらっていく」

「ほう?」

 カーティスの言葉に驚いたのは国王だけではない。

 ティナーシェもびっくりだ。

(公爵って……もらっていくって……どういうこと!?)

「彼女は先程、自分から王女の侍女を辞めた。なら私がもらってもいいだろう? 私の国の民として。もちろん本人の意志を尊重する」

「ふむ……ティナーシェ、お前はどうだ? この男についていく気はあるのか?」

 一同の視線がティナーシェに集まる。

 かつてない緊張状態に、ティナーシェはドクドクと鼓動が脈打ち落ち着かない。

 だがティナーシェの中にはすでに一つの答えがあった。

「陛下、わたしはカーティスさまにお仕えしたいです! どうか許可していただけませんか?」

「いい顔をしているな、ティナーシェ。わかった、許可しよう」

 こうしてティナーシェは、正式に公爵令嬢として、再びザールワースに行くことになった。

 短期間ではなく、この先ずっとだ。

 


「でもどうして陛下はあんなにあっさり認めてくれたんでしょうか?」

 ブレイユ国をあとにし、馬車に揺られながらティナーシェは疑問を口に出した。

「そんなの簡単だ。王女の所業を知っていながら、ブレイユ国王はそれを咎めなかった。つまり、あわよくば、と思っていたのさ」

 ティナーシェの問いにカーティスがあっさりと答えた。

「え……それって、カーティスさまが本当に暗殺されるかもしれないと、期待していたということですか?」

「そういうことだ。その後ろめたさが彼にあったから、私も自分の希望をゴリ押ししたわけだ」

「そんな、とても仲良さそうに見えたのに……」

「交友関係にはあるが、お互い野心がないわけでもない。一見うまくいっているように見えても油断は禁物というわけだ」

 カーティスは楽しげに笑った。

(わ、笑えない。笑えないです、王さま――!)

 ティナーシェは心の中で叫んだのだった。


 それから暫くして、王女はブレイユ国の辺境に飛ばされたという情報が届いた。

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~