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灸をすえる4

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

 ティナーシェはふるふると力なく首を左右に振った。

「来いって言ってるのよっ。このナイフでその男を殺しなさい!」

 しかしティナーシェは再度首を左右に振った。

「あなた私の命令が聞けないの!? やれって言ってるのよッ!」

 この期に及んでティナーシェを自分の都合のいいように使えると思い込んでいる王女は、苛ついて声を荒げた。

「姫さま、もうやめてください。好きだった相手の前で、これ以上醜態を晒したいんですか? そんなの、悲しすぎます……」

「侍女の分際で私に逆らうの? さっさとこのナイフを取りなさい」

 ティナーシェは王女に慈悲の眼差しを向けた。

「わたしはもうあなたの侍女ではありません。たった今からあなたには仕えません。約二年間お世話になりました」 

 今となっては複雑な心境ではあるが、この二年間、彼女の侍女として働かせてもらえたから弟を養うことができたのも事実だ。

 だからティナーシェは感謝と決別の意味を込めて一礼した。

「なに勝手に辞めてるのよ。私は許さないわよ。さっさとこの男を始末して!」

 王女は微塵も理解していない。

 すでにティナーシェの心は王女から離れてしまったことに。

「いやです」

 ティナーシェはきっぱりと断った。

「なんで言うこと聞かないのよ、ティナーシェ!」

 王女は自分の思い通りに動かないティナーシェを怒鳴りつけた。

「もういいだろう、姫君。先程からのティナーシェに対する暴言の数々、いつまでも私が黙っていると思うな。人の命を軽んじ、自ら手を汚そうともしないそなたは――王女として失格だ」

 カーティスがびしゃりと王女に言い放つ。

 その声には王としての威厳と自信がにじみ出る。

「う、わあああぁあぁあぁあぁ――っ!」

 王女はその場に崩れ落ち、叫び声ともとれる泣き声を上げた。

 いつもの優雅な雰囲気を纏う彼女とは大違いだ。

「哀れなものだな。この件は、ブレイユ国王に報告させてもらう。――いくぞ」

 泣き喚く王女を一瞥し、カーティスは踵を返した。

 彼に続いてティナーシェたちも謁見の間をあとにするのだった。

 

 廊下に出ると侍女が控えており、ティナーシェたちは客間に案内された。

 来客用の中でも一番豪華で、王族のみに許される部屋だ。

 中央に四人がけのソファーテーブルのセットがあり、テーブルの上には白地に金の装飾が施された壺に色とりどりの花が飾られている。

 三人はソファーに腰を下ろすと、ほっと一息ついた。

「大丈夫か、ティナーシェ。辛かっただろう」

 申し訳なさそうに自分を見つめるカーティスに、ティナーシェは首を横に振った。

「わたしは平気です。それよりも、弟を助けていただいて本当にありがとうございます。殺されたとばかり思っていたので……っ……う……」

 兜がティナーシェの手から転がり落ちた。

 ティナーシェが両手で顔を覆ったからだ。

 指の隙間からポタポタと熱い涙がこぼれ落ちる。

「ああ、君は城にきたときからずっと弟のことを気にかけていたからな。私の城から少し離れた別邸で面倒をみている」

「こんなによくしていただいて……なんとお礼を申し上げていいのか……」

「礼などいいさ。感動しているとこ悪いが、このあとブレイユ国王に合わなくてはならない。先に服を着替えてきてもらってもいいか?」

「は、はい。すぐに準備してきます」
「ティナーシェさま、衣装はこちらに準備してあります」

 先に席を立ったヴァイスが、隣の部屋の扉を開けて待っている。

 城に着くと同時に前もってこの部屋に運ぶように言っておいたのだ。

「はい、ありがとうございます」

 ティナーシェは席を立つと、着替えるために部屋に入った。

 そこは寝室でベッドの上にドレスが広げて置いてあった。

 ティナーシェの髪の色と同じ明るい水色だ。

 靴は踵の低いもので足首でリボンを結ぶようになっている。

 それと可愛らしい銀のティアラが用意されていた。

「ああ、そっか。いつもの髪留めは置いてきたんだった」

 ティナーシェはサッとドレスに着替えると、頭の上で纏めておいた髪を解いた。

 ふわりと豊かな髪が広がる。

 頭の上に銀のティアラを載せると、自分がまるでお姫様になったような気がした。

(カーティスさま、どんな反応するかな……喜んでくれるかしら?)

 ドキドキしながら扉を開けて、カーティスたちの前に出る。

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~