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灸をすえる3

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

「陛下が私を選んでいてさえくれれば、こんなことしなかったわ」

 銀のナイフが入った箱を握りしめる王女は、どこか物悲しそうに見える。

 だからといって、彼女の罪が消えるわけではない。

「私の命を奪うことは、そなたの侍女を犠牲にしてまで、しなくてはならないことだったのか?」

 王女に問いかけるカーティスの目つきが少しだけ険しくなった。

「それは……だって仕方ないじゃない! 振り向いてくれないなら、私のものになってくれないなら、ほかの誰かのものになるなら、殺すしかないじゃない!」

 王女の気持ちもわからなくはないが、あまりにも自分勝手な考えだとティナーシェは思う。

 もちろん、好きな相手と両思いになれたら、それが一番だ。

(だけどそれは間違っています、姫さま……手に入らなければ殺すなんて。たとえ想いが報われなくとも、わたしはカーティスさまが生きていてくれることが幸せだもの。カーティスさまが幸せでいてくれたら、それで十分――)

「だからといって、わが国にこんな物騒なものを送り込まれては困る。貴重な生き証人ではあるが、危うく殺してしまうところだった」

 カーティスの言葉に合わせて、ヴァイスが刺客たちを王女の前に差し出した。

 もちろん手足は拘束され、武器も取り上げられ、自殺しないように全員口に布を詰められている。

 刺客たちを目の前にした王女は激しく動揺した。

 ティナーシェが失敗したことがわかった時点で即座に送り込んだ者たちだった。

「ティナーシェがいけないのよ! あの子がぐずぐずしないでさっさと実行していれば、こんなことには……こんなことなら、さっさとあの病弱な弟を殺しておけばよかった!」

「少しも反省していないな。そなたには同情の余地もない。ヴァイスが調査しているときに先に助けておいてよかった」

 二人の会話に、ティナーシェは驚きを隠せない。

 ――殺しておけばよかった。

 ――先に助けておいてよかった。

(それって、つまり……ラーダは、生きている……ってこと?)

 ティナーシェの心に一筋の光が差す。本当に今の会話が聞き間違いでないのであれば。

「カーティスさま……ラーダは、弟は生きているんですか?」
「ああ。君がひどく心配していたから、見つけ次第保護させた」

 当然だといわんばかりに、カーティスはティナーシェにウインクしてみせた。

「……っ!!」

(生きてた! ラーダは生きてたんだ! 殺されてなかったんだ!)

 ティナーシェの澄んだ瞳からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。

 自分が暗殺に失敗した時点で、あの世に行ったと思っていた弟が生きているのだ。

 ずっと弟を犠牲にしてしまったと思っていたティナーシェの罪悪感が、霧散した瞬間だった。

「ありがとうございます、ありがとうございます……なんとお礼を言っていいのか……」

 ティナーシェは、泣きながら幾度となく、感謝の言葉を述べた。

 いくらお礼を言ってもこと足りない。

 涙とともに感謝があふれ出てくる。

「その声、ティナーシェなの?」

 それまで傍観していた王女が、突如口を開いた。

 衛兵だとばかり思っていた人物から、聞き覚えのある声がしたのだから当然かもしれない。

 ティナーシェはこくりと頷き、そっと兜を取った。

「なんで生きてるのよ、死んだんじゃなかったの!?」

 王女の発言にカーティスの視線が鋭くなる。

「わたしもそうなると思っていましたが、助けていただきました」

 どことなく気まずいとティナーシェは感じた。

 なぜなら王女はティナーシェが生きていたことを、喜んではいなかったから。

 ティナーシェの身を案じる言葉は一言も出なかったから。

(ああ、姫さまにとってわたしは、ほんとうにただの手駒だったんだ……わたしはこんな人に誠心誠意仕えてたのか……)

 情けないやら虚しいやらで、あとに続く言葉がでてこない。

 しかし、そんなティナーシェに王女は言うのだ。

「なにやってるのよ、ティナーシェ。こっちにいらっしゃい」
「……」

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~