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灸をすえる2

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

「私からの手紙は読んでもらえたか」
「もちろんですわ、陛下」

「そうか、なら余計な説明は省こう。と、その前に。人払いはしなくていいのか、姫君? そなたの汚点が晒されることになると思うが」

 カーティスの口ぶりはどこまでも落ち着いていて穏やかだ。

 口元にはやわらかな笑みが浮かぶ。

「それは陛下のほうではありませんか? このような手紙を送りつけてきて……!」

 王女から堪えきれない怒りが溢れたようだった。

 カーティスの足元に、白い封筒が乱暴に投げつけられた。

 その封筒から、明るい水色の髪の毛がこぼれ出ている。

「その髪は私の侍女のものですわ! 一体彼女になにをしたのです」

「私も鬼ではない。姫君の計画が成功したのか失敗したのか、教えてやらないと哀れだと思ってな」

 カーティスの言葉に王女の顔が醜く歪む。

「そう……あの子やっぱり失敗したのね。とんだ役立たずだわ」

 王女の口から発せられた言葉に、ティナーシェは凍りつく。

 気をしっかり持っていないと、このままへたりこんでしまいそうだ。

(王さまの言うとおりだった……姫さまはわたしの命なんてなんとも思ってなかったんだ……!)

「今日は、そなたの持ち物を返しに来た。受け取って欲しい。……ヴァイス」
「御意」

 カーティスに呼ばれたヴァイスが、黒塗りの箱を持って前へ出る。

 箱の蓋を開け、中身を包む布を広げると、銀のナイフが姿を現す。

「な……っ!?」

 見覚えのある銀のナイフを見た王女の顔色は蒼白だ。

 それからものすごい勢いでヴァイスのところまで駆けてくると、乱暴に銀のナイフを奪い取った。

 まさか証拠の品が残っているとは思わなかったのだろう。

 なにしろ事が済めば誰にもわからないところに処分するように、ティナーシェには手紙で指示してあったのだから。

 ブレイユ国の武装兵たちがざわついた。

 いつも優雅な笑みを湛えている王女が血相を変えて、差し出されたものを奪い取ったのだ。

 あの王女が取り乱すとはどういうことか、と。

「さて、姫君。今一度ご忠告して差し上げよう。人払いをしなくてよいのか? 私はこのままでも一向に構わんが」

 カーティスの言葉に王女はビクッと反応した。

「……っ。皆、すぐにここから出ていきなさい! 早く!」

 王女の命令で武装兵たちはゾロゾロと謁見の間から出ていった。

 辺りはしんと静まり、ブレイユ国の者はティナーシェと王女しかいない。

 常に優雅で高慢な王女が、今は見る影もなく顔面蒼白な様子にティナーシェは衝撃を受けた。

 これが本当に自分に無理難題を押し付けた王女と同一人物なのだろうかと。

「姫君、なぜ私を殺そうとしたのか、すべて話してもらおう。私はそなたとの縁談が原因だと思っているのだが」

「……そうよ、陛下が私との縁談を断ったからよ。二年前のお父さまの生誕祭に訪れた陛下を見て、一瞬で心を奪われたわ。これまで見合いをしてきた貴族や王子なんて一瞬で吹き飛ぶくらいだった」

 それから王女は毎日のようにカーティスのことを思うようになった。

 顔が見たい、声が聞きたい、会ってみたい。

 その想いは日々強くなっていくばかり。

 ある日王女は、彼女の父、ブレイユ国王にお願いした。

 どうしてもカーティスに会いたいと。

 縁談の席を設けてほしいと、それはもうしつこく食い下がったのだ。

 若く、美しく、王女という地位もある。

 自分こそが彼の后に相応しい。

 彼以外の男のところへ嫁ぐ気など微塵もなくなっていた。

 念願叶って、カーティスとの縁談が決まったときの王女の喜びは、天にも昇る心地だった。

 実際にカーティスと二人きりの席を設けてもらい、王女はますます彼に惹かれていった。

 カーティスの王女に対する扱いは紳士的で、とても好感が持てるものだった。

 しかし、翌日、王女は地獄の底に叩きつけられるようなショックを受けた。

 カーティスから届いた手紙には、はっきりと結婚の意志はないことが記されていたのだ。

 それからひと月ほど気持ちが沈んでいた王女だったが、徐々に自分を選ばなかったカーティスへの憎しみがむくむくと湧き上がってきた。

 一度そうなると、王女のカーティスに対する憎しみは爆発的に増えていった。

 その憎しみがピークに達したのが、ティナーシェに『お願い』をしたときだった。

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~