10/24:雑記更新 10/23~:更新再開「吸血鬼と不良神父の溺愛情事」10/22:祝☆完結「癒やしの聖女は神官に体を狙われています」

第四章 すべてうまくいく

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

◆灸をすえる

「全員乗り込んだか?」
「はい、確認済みです」

 カーティスの問いにヴァイスが答える。

 王専用の大きな荷馬車には、先日捕えた刺客と衛兵の格好をしたティナーシェ、カーティスとヴァイスが乗っている。

 荷馬車といってもティナーシェたちが座っている部分は普通の高級な馬車で、そのうしろに別の荷物運搬用の馬車が連結している。

 刺客たちはその荷物用の馬車に乗せられていた。

「では、行こうか」

 カーティスがそう言うと、ヴァイスが御者に出発を告げ馬車が走り出す。

「ティナーシェ、肩は痛くないか?」
「大丈夫です。傷口は完全にふさがってますし、振動も気になりません」

 ティナーシェはやや緊張しながら答えた。

 なにしろ今から故郷に戻り、王女に会いに行くのだ。

 首を絞められ脅された恐怖はまだティナーシェの中に残っていた。

「慣れない衛兵の格好をさせて悪い。念の為、姫君が犯行を認めるまでは顔が見えないほうがいいと思ったんでな」

「賢明なご判断だと思います」

 ティナーシェ自身、今はまだ王女に合うのが不安だった。

 だから顔が見えず視線を合わせずに済む装備は逆にありがたかった。

 腰まである長い髪は頭の上で纏めてある。

 王女との謁見時に頭装備を被る予定だ。

 頭装備の兜は一番軽いものを選んだが、金属でできているのでやはり重いのだ。

「それにしても、華奢なティナーシェさまには衛兵の装備は大きすぎましたね。これでも一番小さいものを用意したんですが」

「そうだな、衛兵にしてはちと可愛すぎたな」

 カーティスとヴァイスはクスクスと笑い合う。

「わ、わたしの本業は侍女ですので……」

 楽しそうに笑う二人が少しばかり恨めしく、ティナーシェは小さな不満を口にした。

「なんだ、可愛いと褒めたのに不服そうだな?」
「こういうのは褒められた気がしません……」

 自分でも装備に着られているのがわかっている。

 なのでティナーシェは不似合いな格好が少しばかり恥ずかしいのだ。

「謁見が終わるまでの辛抱だ、我慢してくれ」

 それに、とカーティスは続ける。

「君がどんな格好をしていようが、可愛いのは事実だ。ずっと私の手元に置いておきたい」

「ティナーシェさまもずいぶん陛下に懐かれましたねぇ」
「だからお前は人をペットのようにいうな」

 ヴァイスとカーティスのやり取りを眺めながら、ティナーシェは力なく笑った。

「あはは……」
(これは懐いてるっていうんだろうか……)

 やがて馬車はブレイユ国に入り城へ到着した。

(ほんの一ヶ月程度離れていただけなのに、懐かしい)

 ティナーシェは見慣れた城に表情が和らぐ。

 だがすぐに神妙な顔つきになった。

(せっかく戻ってきたのに、ラーダはもういないんだ……)

 ティナーシェの大切なたった一人の小さな弟。

 暗殺に失敗した時点で、死が決定してしまった。

 もう二度と「おねえちゃん」と呼んではもらえない。

(わたしには姫さまを裁くことなんてできないけど、罪を認めさせることはできる)

 ティナーシェたち一行はすぐに謁見の間に通された。

 赤い絨毯の先には、ティナーシェを苦しめる元凶となったブレイユ国の王女が豪華な椅子に座っている。

 通路である赤い絨毯の両側には、武装した衛兵が五名ずつ並んで立っている。

 重々しい空気にティナーシェは怯み、顔の見えない兜を被っていてよかったとホッとした。

 一方カーティスはまったく気にした様子もなく、軽い足取りで王女の座す手前五メートルほどのところまでくると立ち止まる。

 ティナーシェたちはカーティスのうしろで床に膝をつく。

 そのうしろには捕縛された刺客たちがいる。

「久しいな、姫君。ずいぶんお元気そうだ」

 カーティスは立ったまま王女に話しかけた。

「わざわざご足労頂き、光栄ですわ、陛下」

 王女は椅子から立ち上がると、優雅に一礼した。

 王女は表情こそにこやかだが、ドレスをつまむ手が小刻みに震えている。

(姫さま、どうしたのかしら? なんだか怒っているみたい)

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~