Oops! It appears that you have disabled your Javascript. In order for you to see this page as it is meant to appear, we ask that you please re-enable your Javascript!

黒羽の矢4

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

「モテモテですね、陛下」
「男にモテても嬉しくないし、お前はちゃんとティナーシェのうしろを守れ」
「御意。あ、陛下、勢い余って殺さないでくださいね」

 刺客の攻撃を交わしながらヴァイスが忠告する。

「ん? お前をか?」
「なにボケてるんです、暗殺者にきまっているでしょう」
「わかってる、よっと!」

 刺客の一人を地に沈め、カーティスは二人目と対峙する。

 そこへちょうど騎士たちが数名合流した。

(暗殺者と戦ってるのに、軽口叩くほど余裕があるんだ……本当にこういったことに慣れているのね。王さまもヴァイスさまもすごく強いんだ……)

 一人、また一人と刺客が倒れ、騎士たちが拘束する。

 新たに茂みから現れた刺客を騎士たちが倒していく。

 精鋭の騎士たちもそうだが、やはりカーティスの剣技は抜きん出ている。

 きっと天賦の才能を持っているのだろう。

 最後の一人を倒したカーティスが、その喉元に切っ先を突きつける。

「素直に白状するとは思えんが、一応聞いておこう。貴様らの雇い主は誰だ?」

(すごい……あっという間に片付けちゃった。王さまも騎士たちもすごく優秀なんだ……。待っててね、ラーダ。もう少ししたら無念を晴らしてあげられる。それができたら、わたしもすぐに会いに行くから――)

 ティナーシェがカーティスと刺客のやり取りを眺めていると、男は舌を噛み切ろうとした。

 だが、瞬時にそれを察知したカーティスが、男の鳩尾に一発見舞った。

「馬鹿が、死に急いでどうする」

 気絶した男に短く言い捨て、カーティスは剣を鞘に収めた。

 カーティスが振り向き、ティナーシェの元へ向かおうとしたときだった。

「陛下! 後ろ!」

 ヴァイスの鋭い声が響いた。

 茂みの向こうから矢が放たれていた。

 すでにカーティスの目前に迫り、この距離で躱すことは難しい。

「カーティスさま!」

 このままではカーティスが矢に貫かれてしまう。

 そうとわかった瞬間、叫ぶ前から自然と体が動いていた。

 ティナーシェは無我夢中でカーティスに体当たりをして突き飛ばす。

「なに!?」

 カーティスは予想外のことに驚愕する。

 なぜか目の前のものが、ティナーシェにはゆっくりと動いて見える。

 驚いたカーティスの体は、時が止まったように、ティナーシェが突き飛ばしたほうへゆっくりと傾いていく。

(王さま、あんなにびっくりしてる。大丈夫、王さまには当たらないから)

「――っ!!」

 次の瞬間、ティナーシェの右肩に激痛が走った。

 想像したこともない痛みに、声も出せない。

 ぷつりと糸が切れた操り人形のように力が抜けたティナーシェの体は、その場に崩れ落ちた。

 まるで不吉の象徴のような黒い矢が刺さっている。

 羽の部分まで真っ黒だ。

「ティナーシェ!」

 即座に体勢を立て直したカーティスが駆け寄り、ティナーシェを抱き起こす。

 幸い矢が刺さったのは右肩で致命傷ではない。

「あの男を捕えろ!」

 ヴァイスの的確な指示が飛ぶ。

 すぐに騎士たちが茂みに駆け寄り、潜んでいた刺客を拘束した。

 これですべての刺客を捕えることができた。

 送り込まれた刺客を捕獲することには成功したが、カーティスの表情は曇っている。

「う……っ……」

 自分は生きているし平気だと伝えたいのに、うまく声が出せずティナーシェは呻く。

 すると、カーティスがはっと我に返り、声を張り上げた。

「ヴァイス、宮廷医師を呼んでこい! だが男はだめだ、女の医師を連れてこいっ」
「御意」

 カーティスの命を受け、ヴァイスが駆けて行った。

 背中に矢を受けたティナーシェよりも青い顔をしたカーティスが、ひどく動揺しているのがわかる。

「ティナーシェ、済まない……君をこんな目に遭わせるつもりじゃなかった。どんな刺客が来ようが君を守れるのだと、傲慢になっていた……っ」

「カーティスさま、そんな顔しないで、ください。わたしは、いつも、余裕たっぷり、に笑っている、カーティスさまが好きです……」

 苦痛に顔を歪めながらティナーシェが話すと、額に脂汗を浮かべたカーティスが首を横に振る。

 ティナーシェを抱き寄せる逞しい腕が、小刻みに震える。

「喋らなくていい、医者が来るまで頑張ってくれ」

 やるせない声で話すカーティスの顔は、今にも泣き出しそうだ。

「わたし、このまま死んでも、悔いは、ありません……っ……人、を殺めようとしていた、わたし、が人を救って……死ねるんですから。弟も……きっと、喜んでくれ、ます……」

 苦痛に耐えながらなんとか言葉を振り絞って伝えると、ティナーシェはふっと微笑んでみせた。

 もしこのまま息絶えてしまうのなら自分の最後の顔を、好きな人が見る自分の最後の顔を、悲しみではなく笑顔で残したかったから。

 そしてティナーシェは意識を手放した。

 誰かが自分の名を叫んだ気がしたが、やけに遠くて聞こえなかった。

 

33+
↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
↑読了ついでにポチッと(*´ω`*)桜猫にちゅ~るが贈られます。
偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~