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黒羽根の矢3

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

 やがて昼前になり、ティナーシェとカーティス、ヴァイスの三人は城内を散策しはじめた。

 あえて警備を薄くしておいたので、侵入済みの刺客を誘い出すためだ。

 人気の少ない場所を選んで歩き回ることにしたのである。

 ティナーシェも同行するのには訳がある。

 刺客の狙いがカーティスの命だけであればまだいいが、証拠隠滅とばかりティナーシェの命も狙われる恐れがあるからだ。

 そのとき二人が離れていれば助けに走る間に、命を落としてしまうかもしれない。

 剣技に長けたカーティスには自分を守る術があるが、ティナーシェにはない。

 ただの十八歳の非力な少女なのだ。

 また、幾度となく修羅場をくぐってきたカーティスには、ティナーシェを守り切る自信があった。

 実際どのみち襲われる可能性があるなら、そこそこ実力のある騎士を護衛につけるよりカーティス自身が対処するほうが遥かに安全といえた。

 それは、騎士たちと手合わせをするカーティスを見ていたティナーシェも納得している。

「まずは北門の城壁沿いをうろついてみるか」

 カーティスの一言で最初の行き先が決まった。

 北門の近くには森に繋がる遊歩道がある。

 ザールワース城は広大な敷地の中に建っており、その中にはいくつも森や丘がある。

 その中でも北門は後ろに山があり、山越えをしてくる者たちがほとんどいないため人の往来も少ない。

 確かに暗殺向きの場所といえる。

 遊歩道は森の小道のようになっていて、回りを背の高い木々で覆われている。

 木々の合間を塗って帯状に差し込む光が心地よい。

「ここってお城の敷地内ですけど、野生の鹿とかいるんですか?」
「城壁の外にならたまに見かける。城壁から向こう側はいい狩場だ」

 ティナーシェは狩場のほうに視線を向ける。

 狩場と言うだけあって、やはり森しか見えない。

 わずかの間ではあるが、よそ見をして歩いていたせいでドレスの裾を踏みつけてしまう。

「きゃっ」

 躓いて転びそうになったが、慣れた様子でカーティスが支えてくれた。

「こんな平坦な道で躓くとはな、手を引いてやろうか?」

 カーティスが手を差し出そうとしたが、ティナーシェは即座に辞退した。

「い、いえっ。滅相もございません! しがない侍女のわたしが、恐れ多いことです」

 ティナーシェはカーティスからサッと離れると、結構ですと胸の前で両手を振った。

「そうか」

 なぜだろう。心なしかカーティスがつまらなそうに見えるのは。

 そう思っていると、後ろからこっそりとヴァイスがささやいた。

「ティナーシェさま。おそらく陛下はあなたと手を繋ぎたかったんだと思います」

 驚いて後ろを振り向くとヴァイスがうんうんと頷く。

「次は繋いであげてください。あなたが嫌でなければ」
「わかりました」

 ティナーシェが喜んで、しかしカーティスに聞こえないように小声で返事をすると、

「二人でなにをコソコソ話してるんだ?」

 と聞かれてしまった。

 しかし微塵も動じずヴァイスがなんでもないと笑顔で返した。

 しばらく歩き続けていると正午を知らせる鐘が鳴り、三人は昼食にすることにした。

 食べ終えると、次は東門の方を徘徊することになった。

 東門の方はいくつかの庭園と、それに面する大きな川が流れている。

 景色は抜群で広い庭園は、城の解放日になると多くの人で賑わう。

 常に解放しているわけではなく、特別なときだけだ。

 川に一番近い庭園をのんびりと散策していると、不意にカーティスが立ち止まった。

「ティナーシェ、私の傍を離れるなよ」

 カーティスが言い終わるとほぼ同時に、斜め前方でなにかが光ったかと思うとナイフが飛んできた。

 だがそれは同質の金属に弾かれて地面に落ちる。

 すでに腰から剣を抜いたカーティスが叩き落としたのだ。

 カーティスが応戦する間にヴァイスが指笛を鳴らす。

 応援の騎士たちを呼ぶためだ。

 前もって精鋭数名に話をつけておいたのだ。 

 ついさっきまで穏やかだった庭園に緊張が走る。

 なんだかよくわからないが、この場の空気がひどく張りつめているのが、ティナーシェにも感じられた。

 黒装束の男が三人カーティスの前に立ちはだかる。

 男たちは曲刀を手に、標的であるカーティスだけを狙っている。

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~