10/24:雑記更新 10/23~:更新再開「吸血鬼と不良神父の溺愛情事」10/22:祝☆完結「癒やしの聖女は神官に体を狙われています」

黒羽根の矢2

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

「私に仇なした時点で、王女の地位を投げ捨てたも同然だ」

 ここで二人の会話を傍観していたティナーシェが会話に加わる。

「あの、カーティスさま。つかぬことをお聞きしますが、なぜ姫さまはカーティスさまを亡き者にしたいのでしょう?」

 ティナーシェの発言を聞いて、カーティスとヴァイスは一瞬固まった。

 さすがに驚いたようだった。

「ちょっと待て、ティナーシェ。君は理由も知らずに私を殺しに来たのか?」
「はい……首を掴まれて強制的に……怖くて理由なんて聞けませんでしたから」

 あのときのことを思い出すと今でもゾッとする。

 窒息死しかねないほどの息苦しさ。

 二度と体験したくないことだ。

「そうか……その上、弟を人質に取られ、本意ではないことを強いられたんだな……。君の姫君が私の命を狙う理由は、私が彼女との縁談を断ったからだ」

「え……っ」
(姫さまはそんなこと、一言も……)

 初めて明かされる事実にティナーシェは驚愕した。

「姫君は一方的に陛下のことをかなり気に入っていましたからね……ブレイユ国王に一度でいいからお見合いをしてくれと言われ、一度だけならとお受けしたのです。結果が早いほうがよいと思い、翌日にはお断りの書状を送ったんです」 

「私が姫君の恨みを買うとしたら、それしか思い当たることがない。姫君は家柄は申し分ないが、正妃にと考えるとどうしても無理だった」

 カーティスはやや重苦しそうに息を吐いた。

「そんな……」

 まさか王女がカーティスを慕っていたとはしらず、ティナーシェは動揺を隠せない。

 だが、カーティスを好きになる気持ちは十分すぎるほどにわかる。

 同じ男性を好きになった者として。

「姫君はかなりプライドが高い方のようでしたから、結果が気に入らなかったんでしょう。それでも逆恨みで命を狙うのはやりすぎですね」

 ヴァイスの言うことはもっともだ。

 いくら好意を寄せた相手に振られたとはいえ、ここまでするのはありえない。

「愛と憎しみは表裏一体という言葉もあるくらいだしな。実際それで滅びた国もあるくらいだ、軽視はできない。丁重に断っても戦の火種になることもある……」

 珍しくカーティスの表情が曇る。

 まだ正妃を迎えていない彼は、相当この問題に頭を悩ませていることが、その表情から窺えた。

「侍女に過ぎないわたしが言うのもなんですが、王さまというお仕事はこんなに大変なんですね」

 あまりにもカーティスが気の毒に思えて、気安いかとは思ったがティナーシェは労いの言葉をかけた。

「やさしいな、君は。今回の件は私にも原因がある。君を巻き込んでしまって、本当に済まない」
「わたしなんかに謝らないでください! 頭を上げてくださいっ! なにやってるんですか!」

 国王に頭を下げられ、ティナーシェはあたふたする。

 無礼を承知でカーティスの肩に手を置き、押し上げた。

「カーティスさまは悪くありません……一番の元凶は姫さまなんですから」
「そうか」

 とだけカーティスは答えた。

 それでも責任を感じているらしく、歯切れの悪い一言だった。

 さらにティナーシェは続ける。

「それにわたしにも落ち度はあります……姫さまが人としての道を外れているとわかっていながら、それを正すことができませんでした」

(そうだ。もっとわたしが怯まず、強気で姫さまを諌めることさえできていれば、ここまで発展しなかったかもしれない……きっとわたしの努力が足りなかったんだ)

 自分が仕える主が悪に染まるのを防ぐことも侍女の努めだ。

 そう思うとティナーシェは無念でならない。

「だが君が、何度も手紙の文面に暗殺を思い留まるよう提言してくれていたのを、私は知っている。なにしろ徹底的にヴァイスに調べさせたからな」

 そこまで調べ上げていたとは驚きだ。

 どうやって王女の元へ渡った手紙を入手したのか想像もつかない。

「本当に陛下は人使いが荒くて困ります」

 などと口走るヴァイスだったが、ティナーシェにはもう慣れっこですと副音声が聞こえた気がした。

「無理難題はお前の得意分野だろう、ヴァイス?」
「このサド……いえ、それだけ俺を信頼してくれているものと受け取っておきます」
「もちろんだ」

 カーティスはにっこりと微笑んだ。

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~