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黒羽根の矢

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

◆黒羽根の矢

 翌日。ティナーシェがカーティスへの部屋に向かっていると、前方にミレーユの姿が見えた。

(ミレーユさま……わたしのことを嫌ってるみたいだから、近づかないようにしなくちゃ)

 カーティスの私室に行くにはどうしてもこの廊下を進まねばならない。

 ティナーシェはなるべく視線を合わせないように歩く。

 お互いの距離が近づくにつれ、緊張感が高まっていく。

 徐々に二人の距離が縮まり、とうとうお互いすれ違った。

 話しかけられなかったことに、ほっと胸を撫で下ろしたその時だった。

「ティナーシェ、と言ったかしら。あなた陛下とどういう関係なの? 陛下は公にはされていないけれど、私の侍女があなたが朝まで陛下のところにいたと言っていたのだけど」

 ミレーユにいきなり声をかけられ、ティナーシェは大きく肩を震わせた。

 どうしてこうも関わりたくないときに、彼女は話しかけてくるのだろう。

「ミレーユさま。わたしは、あなたがいつどこで誰となにをなさっていようと詮索いたしません。ですからわたしのことも放っておいてください。どうせすぐにここから出ていく身です」

「私には言えないことなのかしら?」

 ミレーユは高圧的な聞き方をしてきたが、ティナーシェは動じることなくこう答えた。

 今までのティナーシェであれば、おどおどしていたに違いない。

「……ひとつだけ申し上げるとすれば、陛下とわたしは利害が一致しているというだけです」
「利害? なにを言っているの?」

 ミレーユが訝しむのも当然だ。まるで話が見えない。

「では、わたしはこれで」

 深々と一礼すると、ティナーシェはそのまま部屋に向かった。

「あの子……なんだか雰囲気が変わった?」

 ティナーシェの後ろ姿を見つめながらミレーユが呟いた一言は、本人には届かなかった。


「ああ、よく来たな、ティナーシェ。おはよう」

 カーティスの部屋を訪れると、待ちわびたように招き入れられる。

 室内の四人がけのソファーの一番奥にカーティスが座り、そのすぐ後ろにヴァイスが控えている。

「おはようございます、カーティスさま」

 カーティスに挨拶すると、今度はヴァイスからも挨拶された。

「おはようございます、ヴァイスさま。あの……わたしはただの侍女なので、呼び捨てで」

 ヴァイスにも正体はバレているのだ。

 今更さまをつけられるとティナーシェは面映い。

 しかしそう告げたティナーシェの発言に秒でカーティスの指摘が来た。

「それはだめだ。君を呼び捨てていいのは私だけだ」
「だそうです、ティナーシェさま。それに計画が済むまではそのほうがよいでしょう」

 ヴァイスもそれでいいといった様子だ。

「そうですか」
「まあ、陛下の場合はほかに理由がありそうですが」
「うるさいぞ、ヴァイス」
「それは失礼いたしました」

 カーティスとヴァイスが微笑み合っているが、どこか不穏なものを感じるのはなぜだろう。

 だが、そんなことよりもっと気になることがある。

「お二人ともそんな暢気にしてて大丈夫なんですか? 昨日の作戦では早ければ今日の昼にも刺客が来るって言ってましたけど……」

「ああ、来るんじゃないか。とっておきの早馬で伝令を送ったからな。今頃血相変えてるかもな、君の姫君は」

「そ、そうですか」

 ティナーシェがそう答えると、ヴァイスがソファーに座るように誘導する。

 カーティスの隣を指示され、少し躊躇したがそのまま彼の横に腰を下ろした。

「存分に彼女を煽る文章を書いてやったから、今頃ものすごい形相だろうな」
「イキイキしすぎですよ、陛下」

 これからどんな刺客が送り込まれるかもわからないのに、楽しそうな様子のカーティスにヴァイスのツッコミが入る。

「私は弱い者いじめが大嫌いなんだ。立場上なにも言えない者に無理強いをするような輩は、特にな」
「姫君が気の毒です……」 

 ヴァイスはこれから起こることがありありと頭の中に浮かんだのか、完全に王女に同情している。

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~