10/24:雑記更新 10/23~:更新再開「吸血鬼と不良神父の溺愛情事」10/22:祝☆完結「癒やしの聖女は神官に体を狙われています」

看病5

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

 ティナーシェは恥ずかしくてたまらないが、自分ひとりでは背中をうまく拭くことはできない。

 だから、カーティスの言うとおりにすることにした。

 夜着のボタンを外し、上着を脱いだ。

 包帯を替えるときに邪魔になるので、胸を覆う下着はつけていない。

 ティナーシェは背中が拭きやすいように、長い髪を前に寄せた。

 カーティスの目の前に、ティナーシェの背中が晒された。

 右肩に矢を受けたとはいえ、ティナーシェの肌はとても瑞々しい。

 胴から腰にかけて女性らしいなだらかな曲線を描く。

 だが、肩も腰も細く、カーティスが本気を出せば簡単に折れてしまうだろう。

 タオルを絞ると、カーティスはそっと肌を撫でるようにティナーシェの背中を拭いていく。

「こんなに、華奢な体で私を助けてくれたんだな……」

 背中を拭き終えると、カーティスはそっと手のひらをティナーシェの背中に置いた。

 切れ長の理知的な瞳が切なげに細められる。

 ティナーシェに傷を追わせた罪悪感か、それとも守り通せなかった自責の念からだろうか。

「もう、二度とあんな真似はするな……心臓がいくつあっても足りない」

 その声は普段のカーティスとは別人ではないかと思うほど、頼りなく弱々しかった。

「カーティスさま、あまり自分を責めないでください。わたしはこうして生きていますし、カーティスさまのせいでもありません」

(本来なら死刑になってもおかしくないわたしを、カーティスさまは生かしてくれた。わたしはその恩を返しただけ。ラーダの仇を打つまでは、この命はカーティスさまのために……)

 わずかに身を乗り出したカーティスの重みで、ベッドが小さく軋む。

「この傷は本来私が受けるはずだった……私の傷も同然だ」

 その直後、なにかがティナーシェの背中に触れた。

 手のひらとも指の感触とも違う。もっとやわらかいものだ。

 それは二度、三度とティナーシェの背中に押し当てられた。

 どこか既視感を覚えるそれは、カーティスの唇だ。

「な、なにしてるんですかっ、背中にキスするなんて」
「ありがたく思え。女性の背中に口づけたのは、君が初めてだ」
「そそそ、そういう問題では……っ」

 ティナーシェはもう軽くパニック状態だ。

 どうしていいのかわからない。

「祝福のキスだと思えばいい」

 背後でクスクスと笑っているのが伝わってくる。

 どうやらいつものカーティスに戻ったようだ。

 ティナーシェはほっと胸を撫でおろした。

 好きな人にはいつも笑顔でいてほしい。

「適当なこと言わないでください」
「そうでもない。君の傷が早く治るよう念を込めた」

 言葉とともに上着を肩にかけられ、ティナーシェは胸がキュンと疼いた。

(ずるいです、カーティスさま。そんなふうに言われたらもう反論できません)

 いけないと思いつつも、ティナーシェはさらにカーティスを好きになってしまう自分に気づいていた。


 ティナーシェが自力で歩けるようなってから二日後、彼女はふたたびブレイユ国に戻ることになる。

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~