★2/15:雑記更新 ・「嘘つき聖女候補~」と「座学の女王さま~」をメインに更新中。

看病3

各話表紙

 そのすぐあとに、ふたたび女医が訪れた。

 ティナーシェの様子を診るためだ。

「ティナーシェさま、一度包帯を取り替えましょう。ついでに体も綺麗に拭きましょうね」

「はい、よろしくお願いします」

 とはいうものの、ティナーシェはまだ自力で動くことができない。

 女医は慣れた様子でティナーシェの服を脱がし、水に浸して絞ったタオルで丁寧に肌をなぞるように拭いてくれる。

 体を拭きながら、女医が話す。

「陛下がやさしい御方でよかったですね、ティナーシェさま。偶然駆けつけたときに男性の医師もいたのですが、嫁入り前の娘が異性に肌を見られるのはつらいだろうっておっしゃって。ティナーシェさまのお世話は女性だけでするように指示してくださったんですよ」

「そうだったんですか……それは嬉しいです。やっぱり、好きな人にしか見られたくありませんから……」

(王さまがそこまで考えてくれてたなんて……一時は命を奪おうとしたのに。ただの侍女に過ぎないわたしなんかのために、ここまでしてくれるなんて)

 カーティスの心配りにティナーシェは胸が熱くなる。

 とっさに体が反応しただけとはいえ、カーティスを助けて本当によかったと思った。

「今まで何人と怪我人を手当してきましたが、あんなに余裕のない陛下は初めて見ました。陛下にとってあなたはよほど大切な人なんですね」

「そうでしょうか……?」

「ええ。陛下自身はなんとか普通に振る舞おうとしていらっしゃいましたが、その場にいた全員が動揺を感じ取っていたような気がします」

 初めて聞かされる事実にティナーシェは、驚きと淡い期待を抱いてしまう。

 やがて体が拭き終わると、女医は繊細な手つきでティナーシェの包帯を外していく。

 傷口を確認すると塗り薬が塗られた湿布を貼り、丁寧に包帯を巻いた。

「傷口はまだ完全にふさがっていませんが、出血は完全に止まってますしもう大丈夫です」

「ありがとうございます」

「特に大事はないと思いますが、なにか体の異変を感じたらすぐに教えてくださいね」

「はい、わかりました」

 女医は手当が済むと医務室を出ていった。

 そのあと、なぜかティナーシェは車椅子に移され、部屋を移動させられた。

 その部屋はカーティスの私室の隣だ。

 ティナーシェが不思議がっていると「陛下の指示です」と返された。

「なんだかよくわからないけど、王さまなりに考えがあるのかな……」

 ベッドに横たえられたティナーシェは、天井をぼんやりと眺めながら呟いた。

 夕方になるとカーティスが部屋にやってきた。

 小さなトレイには木の器に盛られたオートミールが入っている。

「体の調子はどうだ、ティナーシェ」

「ほんの少し怠さを感じますが、特に問題はありません。用事のついでに話し相手になってくださったり、皆さんよくしてくれています」

「そうか。腹が減っただろう。とはいっても、いきなり通常食は体に負担がかかる。今回はこれで我慢してくれ」

 確かにお腹は空いていた。

 オートミールの香りがしたとたん、体が喜ぶのがわかった。

「はい。でも、わざわざカーティスさまがもって来なくても……」
「起こすぞ」
「あっ、はい」

 夕食を食べやすいように、カーティスが体を起こしてくれた。

 自分で起き上がれないこともないが、少し動くだけで右肩の傷が痛む。

「わざわざ、じゃない。私が君に食べさせたくて持ってきたんだ」
「え……」

「不安なのかもしれない。君を守りきれなかったことが。だが部屋が近ければすぐ駆けつけられる。君に関わることで私にできることは、すべてやりたい」

 カーティスはトレイをベッドのサイドテーブルに置くと、オートミールの入った器を手に取る。

 銀のスプーンにオートミールをすくうと、ふーふーと冷ましてティナーシェの口元に運ぶ。

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~