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看病

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

◆看病

 次にティナーシェが目覚めると、そこは医務室だった。

 ティナーシェが右肩に矢を受けたあと、ヴァイスの的確な指示ですぐに宮廷医師が駆けつけ、応急処置を済ませたのだった。

 それからティナーシェは医務室に運ばれ治療を受けている状態だ。

「お目覚めですか、ティナーシェさま!」

 ぼやけた視界に映ったのは、宮廷医師のようだ。

 それも女医だ。彼女はティナーシェが目覚めたことを確認すると、ものすごい勢いで部屋を出た。

 それから間をおかず、バタバタと足音がして派手に扉が開く音がした。

「ティナーシェ!」

 怒涛の勢いでカーティスが部屋に駆け込んできた。

 余程急いで駆けつけたのか、息が上がっている。

「……カーティスさま」
「よかった、意識が戻ったんだな」

 まだ頼りないが、ティナーシェの声を聞いたことで安心したのか、カーティスはベッドの端に座り、重荷を下ろすように息を吐いた。

「君は二日間眠り続けていた」
「そう、ですか」

 まだ少し意識がぼやけているが、カーティスを守ることができたのだとわかると、ティナーシェは微笑んだ。

「……責めないのか、私を。君をこんな目に遭わせてしまった張本人だぞ。なぜ微笑んでくれるんだ?」
「これでいいんです。カーティスさまはこんなことで倒れてはいけない御方です。本当に無事で良かった……」

(ラーダを失って、王さままで命を落とすようなことがあったら、わたしは生きる意味を見失ってしまったかもしれない。かけがえのない人が生きているって……なんて嬉しいことなんだろう――)

 まだ体が重怠くて腕一本動かせないが、ティナーシェは唯一動かせる頭を少しだけ動かし、カーティスを見つめる。

「そんな情けない顔でどうするんですか。ザールワースの王さまともあろう御方が、たかが侍女が怪我をしたくらいで狼狽えてはいけません」

 ティナーシェの言葉に安心したのか、カーティスが微笑んだ。

 そして穏やかに告げる。

「たかが侍女ではない……もし君が帰らぬ人となっていたら、誰が私に本を読んでくれるんだ。あれは君以外には務まらない」

「そんなにわたしの朗読を気に入ってくださっていたんですか……身に余る光栄です」

「ああ、だから勝手に死ぬようなことは許さない。どれだけ私が肝を冷やしたことか……本当に生きているんだな?」

 まだ実感が強く感じられないのか、カーティスが自分の顔を覗き込む。

 もっと近くで見ようと、ティナーシェの体の両側に手をつきまじまじと見つめる。

「こうやって会話しているのに、信じられませんか?」
「少しな。……触れてもいいか?」

 ささやくような声音で尋ねるカーティスの瞳がわずかに熱を孕む。

「どうぞ。いくらでも確かめてください」
「ああ」

 ティナーシェが承諾すると、カーティスは右手で彼女の頬に触れた。

 ティナーシェの肌に触れてほっとしたのか、カーティスはやっと安堵の息を漏らした。

 細められた淡い青紫の瞳が、心底嬉しそうにティナーシェを見つめる。

「……」

 あまりにも嬉しそうにカーティスが見つめてくるので、自分で許可しておきながら、ティナーシェは今更恥ずかしくなってきた。

 瞬く間に頬が熱くなり、カーティスとまともに目が合わせられない。

「なぜ視線を逸らす? 疚しいことでもあるのか?」

 普段より少し低めの声は、どこか甘く官能的な香水のようだ。

「いえ、そんなことは……」

 カーティスから感じる匂い立つような色香に、初心なティナーシェはどうしていいかわからず瞳を潤ませる。

 否定しておきながら、自分がこんなふうになってしまうのは疚しいことがあるからなのだろうか。

 自分を上から覆うように覗き込むカーティスの広い胸や息づかい、香り、そして声。

 そのどれもが艶めいて見え、恥ずかしいような逃げ出したいような気持ちになる。

「また、泣きそうな顔をしている……だが今までとは違うな」

 ティナーシェの頬に添えられていたカーティスの手は、彼女の唇に移動している。

 すらりと伸びた形の良い指が、薔薇の蕾のようなティナーシェの唇の感触を味わうように、ゆっくりとなぞる。

 どうしようもなく恥ずかしくてたまらないのに、カーティスに触れられる心地よさと嬉しさに、ティナーシェの胸の鼓動はどんどん速くなる。

 激しく脈打つ心臓が頭の中にあるのではないかというくらい、鼓動が大きく響いている。

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~