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銀のナイフ3

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

「ありがとうございました、カーティスさま」
「どういたしまして。か弱い者を守るのも王の役目だからな」

「本当に大丈夫ですか? こぶになってませんか? 肩とか背中とかきっと痣になってるんじゃ……」

「この前、私が騎士の連中とやり合うのを見ていただろう? 彼らから食らう攻撃に比べたら大したことはない」
「なら、よかったです……」

 そうは言ったものの、ティナーシェは申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

「ティナーシェ、森に行こう。そこで本を読んでくれないか?」
「は、はい。そんなことでよろしければ」

 というわけで二人は近くの森に向かうこととなった。

 緑に苔むした道を白馬が小走りで進む。

 途中までは地面が見えていたが、森が深くなるにつれ、道の表面は緑に覆われていった。

「お城の近くにこんな森があったんですね……」
「運がよければ野生の鹿も見ることができるぞ。キツネや野ウサギはよく見かけるな」
「それは是非見てみたいですね」

 一見普通に会話をしているが、ティナーシェは内心ひどく困惑している。

 まさか王と二人で森に出かけることになるとは思わなかったし、相乗りするとも思わなかった。

 自分のすぐ後ろに王がいるのだと思うととても落ち着かない。

「もう少しで目的地だ。透明度の高い湖がある。野生動物もよく水を飲みに来るから、色々見られるかもしれないな」

 カーティスの言葉通り、やがて森が開け、目の前に湖が姿を現した。

 そう大きい湖ではなく、橋が架かっている。

 橋の手前で馬を繋ぎ、ティナーシェとカーティスは湖に歩み寄る。

「すごい……こんなに透明度が高いなんて……」

 池の畔は小さく白い花で埋め尽くされていて、所々に水飲みに来た動物たちがいる。

 湖を覗き込めば、沈殿した木の葉が一枚一枚くっきりと見え、水中を小魚が横切るのが見えた。

 湖の表面には青空と背の高い森の木々が映り込んでいる。

 切り抜いて一枚の絵にしてしまいたいほど美しい場所だ。

「あ、ウサギ!」

 ティナーシェの表情がパッと明るくなる。

 侍女として城で働きだしてからは、あまり遠出することがなくなり、久々に野生のウサギを見たのだ。

 茶色の毛並みと黒い瞳が愛らしい。

 しかし、そのウサギを見ていたティナーシェの表情が曇る。

 ティナーシェはウサギのもとに駆け寄った。

 人間が近づいてきて驚いたウサギは当然逃げるのだが、動きが遅い。

 どこか動きがぎこちない。

 だからティナーシェはすぐに追いついた。

「……足を怪我してる」

 ティナーシェは持っていたハンカチを引き裂き、簡易包帯を作ると、血がにじむウサギの前足に巻いてやる。

 大した処置はできないが、傷口の保護と止血には役に立つだろう。

「驚かせてごめんなさい、もうなにもしないわ」

 ウサギは不思議そうに首を傾げたあと、ひょこひょこと森の中へ消えていった。

(あんな傷ついた足で大丈夫かしら……襲われないといいけど)

 ティナーシェが不安そうに森の奥を見つめていると、カーティスも近づいてきた。

「いきなり歩き出すからどうしたのかと思えば、手負いのウサギだったか」
「はい。無事に生き延びてくれるとよいのですが」
「そうだな」

 しばし森の奥を眺めたあと、二人は橋の手前まで戻ってきた。

 本を読むためだ。ティナーシェが先に湖の畔に座ると、すぐ隣にカーティスが座る。

 しかし次の彼の行為にティナーシェは瞠目した。

「借りるぞ」

 と短い許可を求める声とともに、カーティスが先日の庭でしたように、ティナーシェの膝に頭を置いたのだ。

 膝枕再びである。

「うっ、か、カーティスさま……」

 恥ずかしさにティナーシェが戸惑っていると、カーティスは笑いながらこう答えた。

「これはあれだ、君を本から守ってあげた報酬だな」
「ほ、報酬、ですか……なるほど。では、朗読をはじめます……」

 報酬と言い切られては、ティナーシェは反論のしようがない。

 それに好きな相手から要求される膝枕は、ティナーシェにとって嬉しいものだ。

 浮き立つ気持ちを抑えて図書館で借りた本を開き、さっそく読みはじめる。

「むかし、あるところに白ウサギと黒ウサギの家族が住んでいました。白ウサギがお父さん、黒ウサギがお母さんで、七匹の仔ウサギと暮らしていました。仔ウサギたちはとても元気で毛玉のようにぴょんぴょんと跳ね、白詰草で埋め尽くされた広い野原を駆け回っています」

(どうしてこんなことに……わたしは王さまを仕留めるために図書館に行ったのに。どうしてこんなに長閑な湖畔で朗読してるんだろう……)

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~