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ダンスの手ほどき4

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

 目から鱗だった。

 こんな感じでカーティスは次々とティナーシェの動きを改善していった。

 そうしてすべての指導が終わり、もう一度二人は踊りはじめる。

 最初は泣きそうになっていたのが嘘のように、ティナーシェに浮かぶ表情は笑顔だ。

「うん、だいぶ良くなった。君は頭ではきちんと理解できているから、あとは体の動かし方を覚えるだけだな」

「ありがとうございます、カーティスさま。わたし、ダンスがこんなに楽しいものだなんて知りませんでした」

 お世辞にも上手とは言えないが、足を踏むこともなくスムーズに踊れるようになったのだ。

 足を踏んでばかりいた頃とは大違いである。

 やがてダンスの授業が終わり、バイオリン奏者は部屋を出ていった。

 今ダンスホールにいるのは、ティナーシェとカーティスの二人だけだ。

「もっと練習すれば、さらに上達する」
「はい、頑張ります!」

 ティナーシェはとびっきりの笑顔で答えた。

 その笑顔を見たカーティスが、ふっと目を細くする。

「いつもそうやって笑っていろ。そのほうが可愛い」
「は……え?」

 はいと言いかけてティナーシェは戸惑った。

 あまり褒められることになれていないティナーシェは、一気に頬を薔薇色に染めた。

「可愛いと言ったんだ」
「そそそ、そんな滅相もございません! わたしなんて」

 恐れ多いと感じたティナーシェは、思わずカーティスから一歩うしろに下がってしまった。

「謙遜が美学だと思っているならやめたほうがいい。君は本当に可愛い。国王である私がいうのだから、間違いない」

「やめてください。恥ずかしいですから……」

 ティナーシェはさらに一歩後退した。その背後には窓がある。

「本当のことを言ってなにが悪い。それとな、そんなふうに逃げられると追い詰めたくなる」

 そう話すカーティスはどこか楽しくて仕方がないといった様子だ。

 カーティスが一歩踏み出す。

 ティナーシェが一歩下がる。

「ひゃっ」

 自分の体に壁と窓が当たったことにびっくりして、ティナーシェは情けない悲鳴を上げた。

 もう逃げ場はない。

(こ、これはもしかして追い詰められてしまった……?)

 どうしようとオロオロしていると、自分を挟むように窓に両手をつかれ、身動きできなくなってしまった。

 胸の鼓動が一気に激しさを増し、頬が熱くなる。

「あっ、あの、ずいぶん距離が近いようですが……っ」
「嫌なら拒めばいい」

 ささやくような低く甘い声が耳をくすぐる。

 カーティスは穏やかだがどこか熱っぽい眼差しを向ける。

 その間にもどんどん体は近づき、気づけばティナーシェの指はカーティスの指に絡め取られ窓に縫い止められた。

 そのまま二人の体は隙間もないほどに重なった。

 服越しにカーティスの香りと体温が伝わってきて、ティナーシェはゾクゾクする。

 自分の想い人が体を密着させてきたことで、体が勝手に喜んでしまう。

 しかし、わずかに残った理性がこんなことはいけないと訴えてくる。

(だけど……わたしは王さまが好き。大好き……本来なら拒絶しないといけないんだろうけど――)

 ティナーシェがそう思う間にも、カーティスが顔を寄せてくる。

「……っ」

 なにか言わなければと思うが、ティナーシェは言葉に詰まる。

「抵抗しないのなら、このままキスするぞ?」

 お互いの唇が触れるのではないかというほどの近距離で、カーティスがささやいた。

 その瞬間ティナーシェの鼓動がどくんと跳ねた。

 全身の血が逆流するのではないかというくらい、体中が火照ってどうしようもない。

 怖いほどにカーティスの瞳が熱を孕み、それでいて妙な色気がにじみ出る。

 そんな目で見つめられて逸らせるほどティナーシェは経験豊かではなかった。

「……」

 もう言葉にならない。ティナーシェの瞳が火照りのためにじんわりと涙でにじむ。

 それを見たカーティスは熱い吐息を吐いた。

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~