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ダンスの手ほどき2

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

(ちっとも知らなかった……王さまがラーダに会いに来ていたなんて。ラーダも今までなにも言わなかったし……だけど、あんなに嬉しそうな顔久しぶりだわ)

 カーティスへの感謝の気持ちとともに、ティナーシェはさらに彼への恋心が深まっていく。

 王女さえ無理だったから、望みはないとわかっているのに。

(でも、こうやって胸のうちで思っているだけなら……)

 これくらいは許してほしいとティナーシェは思う。

 庭に出ると、日差しはそこそこ強いが、とても爽やかな風が吹いていて少しも暑いとは感じない。

「わあー、気持ちいいねえ、王さま!」

「はは、そうだな。すぐそこにミルベリーの実がなっている。取ってみるか?」

「うんっ!」
「よし、いい返事だ」

 カーティスはミルベリーの実る木の側まで来ると、ラーダを高く持ち上げた。

 ちょうど枝先に垂れ下がるミルベリーに手が届く。

 ラーダの小さな手が小さなミルベリーを、もぎ取った。

「とれた! これ、おねえちゃんの苦手なやつだよ、王さま」
「ああ、知っている。酸っぱいからな」
「うん。ぼくも苦手なんだ。どうせ食べるなら甘いのがいいよ」

 二人の会話から、初めてここを訪れた日、カーティスにミルベリーを勧められたことをティナーシェは思い出す。

 あのときは本当に酸っぱくて、よく自分でも吐き出さなかったと思ったほどだ。

「君が大きくなってお酒を飲むようになれば、大好物になるかもしれないぞ?」
「えー? なるかなあ?」

 自分が好きな人と、大切な弟が楽しそうな様子を眺めているティナーシェの目頭が熱くなる。

(こんな日がくるなんて思わなかった……なんて幸せなんだろう。神さま、ありがとうございます――王さまに精一杯仕えさせていただきます)

 新たにカーティスへの忠誠を固めるティナーシェだった。

 暫く庭で過ごしていると、カーティスが話しかけてきた。

「次はダンスの授業だろう? 今日は私が担当することになっている」
「え……えええ!?」

 予想もしなかったことに、ティナーシェは思わず声をあげてしまった。

「なんだその反応は。嬉しくないのか?」

「いえ、嬉しいですけど、わざわざカーティスさまがそんなこと…………それにわたしは、ダンスがとっても下手なんです。きっと何度も足を踏んでしまいます」

 自分の恥をさらけ出す恥ずかしさに、ティナーシェは顔を真っ赤に染めた。

 顔から湯気が立ち上っているのではないかというくらいには、恥ずかしい。

「そうらしいな。ヴァイスから聞いている。遠慮しないでどんどん踏んでくれ」

「でも、本当に、本当に下手なんです! 先生が気の毒でたまらなくて……というか、先生が日に日に憔悴していくのでどうしたらいいのか……」

「そんなに君のダンスはひどいのか?」
「はい。きっとカーティスさまも呆れてしまいます」

 それから授業の時間になり、ティナーシェたちは一度屋敷の中へ戻った。

 ラーダをベッドに移動させると、ティナーシェとカーティスはダンスホールに移動する。

 足運びが見えやすいように、ティナーシェはいつものドレスからすねが隠れる程度のものに着替えた。

 相手の足を踏んでも痛くないように、靴も靴底が平べったいものにした。

「では一度踊ってみよう」

 カーティスがバイオリン奏者に合図すると、ゆったりとした旋律が流れはじめる。

「か、カーティスさま……っ」

「大丈夫。君に踏まれたくらいで私の足は折れない。何回踏んでもいいから、とにかく一曲踊りきるんだ」

「わかりま……あっ……ごめんなさ、きゃっ……」

 必死に踊ろうとするティナーシェだが、出だしからカーティスの足を立て続けに踏んでしまう。

「大丈夫、そのまま続けて」
「はい……っ」

 それから何度もカーティスの足を踏みつけながら、一曲踊り終わる頃にはティナーシェは泣きそうになっていた。

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~