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ダンスの手ほどき

各話表紙 偽りの公爵令嬢は~

◆ダンスの手ほどき

 ザールワースに戻ってきてから一週間が過ぎた。

 ティナーシェは戻ってきてからずっと、弟のラーダの身の回りの世話をしている。

 といっても、カーティスが優秀な医者と侍女をつけてくれているので、ティナーシェがすることはほとんどない。

 まだベッドで寝ていることが多いラーダであるが、最近は少しずつ活動範囲が広がってきた。

「それにしても、ずいぶん顔色が良くなったわね、ラーダ」
「うん! おいしいものいっぱい食べてるからかなあ?」
「うふふ、そうかもしれないわね」

 ラーダの無邪気な問いにティナーシェから笑みがこぼれる。

(ああ、なんて幸せなんだろう。ラーダに栄養があるものをちゃんと食べさせてあげられるし、ここはとても空気が綺麗だわ。王さまにはいくら感謝しても足りない)

 ここは城近くのカーティスの別邸だ。

 さすがに城よりは小さいが、それでも普通の貴族の倍以上の大きさの屋敷である。

 ティナーシェはここに来てから、カーティスの提案を受け入れ、位置から公爵令嬢としての教育を受けている。

 ブレイユ国王に公爵の地位を与えられたのに、それに関する知識がまったくないのは今後なにかと支障がでるだろうと、カーティスが家庭教師までつけてくれたのだ。

 ティナーシェは学ぶことは嫌いではなかったし、実際どんどん知識や作法を吸収し身につけていった。

 そんなティナーシェにも苦手な分野があった。

 それはダンスだ。

 どうにもリズムを合わせるのがうまくいかず、家庭教師の足を踏むことはお約束と化している。

(ダンスは見ている分にはすごく楽しそうで好きなんだけど、自分がこんなにリズム感がないなんて知らなかったわ)

 と、これが初めてダンスを踊ったティナーシェの感想だ。

「おねえちゃん、えほんよんで」

 あれこれ考えていると退屈したのか、ラーダに朗読をせがまれた。

 なのでティナーシェは膝においていた絵本を開き、読み聞かせをはじめた。

「三人の赤ずきん。むかし、西にある森のなかに三人の女の子と、お父さんとお母さんが住んでいました。女の子は三つ子でとっても仲良しです……」

 ティナーシェはラーダに読み聞かせることができる幸せを噛みしめながら、感情を込めて物語を紡ぐ。

 そうして、どんどん読み進め、物語が終わりに差し掛かった頃、ラーダがパッと笑顔になる。

 だがその視線はティナーシェではなく、そのさらにうしろに注がれている。

 その人物はラーダに声を出さないようにと口の前で人差し指を立て、ゆっくりと背後からティナーシェに近づいていく。

 ラーダはクスクス笑いながらそれを見守っている。

「こうして、赤ずきんたちは幸せに暮らしました。終わり」
「なんど聞いても君の朗読は素晴らしいな」
「えっ!?」

 今この場にいるはずのない声がして、ティナーシェは目を丸くする。

 声の主を確認するために振り返れば、自分のうしろにカーティスが立っていた。

「カーティスさま」
「王さまー! 抱っこして~!」

 ラーダはベッドの上からカーティスに手を伸ばす。

「いいとも」
「わーい!」

 ひょいとカーティスに抱き上げられ、ラーダは大はしゃぎだ。

 こんなに喜ぶラーダを見たのは初めてで、ティナーシェはぽかんとした。

(え、どういうこと? どうして王さまとラーダがこんなに仲良さそうにしてるの?)

 なぜカーティスとラーダがこんなに仲がいいかというと、ヴァイスにティナーシェのことを調査させ保護したときから、度々ラーダの元を訪れていたからだ。

 ラーダはカーティスのことを年の離れた兄のように、また父のように慕っている。

「だ、だめよラーダ。王さまに失礼でしょ……」

 慌てたティナーシェは、カーティスからラーダを引き取ろうとした。
 が、カーティスにやんわりと拒まれる。

「いいんだ、ティナーシェ。私が許可したんだ。ろくに外にも出られないと言っていたんでな、こうやってたまに一緒に散歩しているんだよ。そうだよな? ラーダ」

「うんっ!」

 カーティスの問いかけにラーダははちきれんばかりの笑みで答えた。

 ラーダを抱いたカーティスは、そのまま部屋を出た。

 ティナーシェも予想外の事態にオロオロしながらあとをついていく。

 

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偽りの公爵令嬢は~
~桜猫*日和~