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王女様は賭けレースがお好き3

各話表紙:護衛騎士 護衛騎士は~

 王女の身でありながらお忍びで外に出ることを王が咎めないのは、それも彼女に必要だと感じてのことだ。

 また、王はとても穏やかな性格で、このエステルバーム王国も全体的にのんびりのほほんとした土地柄だ。

 海を隔てた隣国は巨大な軍事国家であるが、小さな島国であるこの国のことは眼中にないらしく、攻めてくる気配もない。

 そんなわけでこの国は、この数百年の間とても平和な時が流れている。

 そして、なぜエリーアスが王女の専属護衛騎士として選ばれたかといえば、彼は宰相の息子で、且つ、ユージェニーが『護衛をつけるなら美形じゃなきゃ嫌!』と言ったからだ。

 見目がよく護衛としても有能な者をと考えた時に、真っ先に彼が候補に上がったのは当然と言えよう。

 それに王には彼を信頼するに足る理由がひとつあった。

「あなたは少し育ちましたね。会ったばかりの頃は私の鳩尾くらいのところに頭があったものです。まあ、胸は当時とあまり変わらないようですが」

「一言多い! それにセクハラよ、それ!」

「事実を述べただけですが。ああ、図星を指されたことがお気に障りましたか。胸は揉むと大きくなると言いますし、私で良ければ揉んで差し上げますが」

「もう! 馬鹿! せっかく綺麗な顔なのに、そんなこと言わないで!」

 とまあ、常時こんな調子なので、美形のイメージを破壊され続けてきたユージェニーである。

 だからこそ彼女は思う。

(美形には発する言葉の一つ一つも、美しくあってほしいの! せっかく綺麗に生まれてきたのに勿体無いじゃない……なんで顔色ひとつ変えずにそんなこと言えるのよ)

 と。

「顔とセクハラ発言は関係ありません。私が揉めば大きくなることうけあいなのに、チャンスを逃しましたね」

「もう言わなくていいから!」

 なんでワタモノレースに参加しに来て胸のことを言われなくてはならないのか、とユージェニーは羞恥に頬を染める。

 恥ずかしさのあまり、思わず両手でエリーアスの口元を覆い隠した。

 しかし、当のエリーアスは静かに彼女を見下ろす。

 なにか言葉を発するでもなく、ただ静かに彼女を見つめる。

 表情は何一つ変わらないのに、理知的な菫色の瞳に見つめられるとなぜかユージェニーは胸がドキドキして脈が速くなるのが自分でもわかる。

 押し当てたや柔らかな手のひらから、彼の滑らかな肌の感触と体温が伝わってきて、綺麗な人形ではなく確かに生身の人間なのだと再認識する。

 ふと口元を覆う彼女の手の甲を撫でるように、エリーアスの男らしい、けれどすらりと伸びた指が触れ、一回り大きな手が重なる。

 ただそれだけの行為に、またユージェニーの鼓動が早送りのように加速する。

 重ねられた手がそのまま彼女の白い手を取ると、口元からそっと引き剥がす。

「口は、手で覆うものではありません」

 そして、エリーアスはユージェニーの細い指に花びらが触れるようにそっと口づけを落とす。

 その横顔は緻密に彫られた彫刻のように美しい。

 エリーアスの唇が指に触れたのはほんの一瞬のことだったが、ユージェニーにはもっと長く感じられた。

 指に口づけるために少し俯いたエリーアスは伏し目がちになり、長い睫毛が菫色の瞳を隠した。

 再び顔を上げた彼と視線が重なると、ユージェニーの胸の鼓動ががドクンと大きく跳ねた。

 再び相見えた、菫色の瞳のなんと美しいことか。

「こんな風に、優しく触れるものですよ」

「――!!」
(きっ……きゃあぁーーーーっ!)

 胸のときめきが頂点に達したユージェニーは、胸中であられもない悲鳴をあげてしまう。

 心臓がものすごい勢いで早鐘を打つ。

「真っ赤ですよ、顔。この程度で動揺なさるとは」
「あ、あなたと違って、わたしは純粋なのよ……っ」

(こいつ絶対わたしがこういうのに弱いってわかっててやってるわね……。なんて奴なの。そりゃあ美形にこんな風にされて悪い気はしないけども)

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護衛騎士は~
~桜猫*日和~