10/24:雑記更新 10/23~:更新再開「吸血鬼と不良神父の溺愛情事」10/22:祝☆完結「癒やしの聖女は神官に体を狙われています」

王女様は賭けレースがお好き

各話表紙:護衛騎士 護衛騎士は~

「きゃあああ! あの子すっごく可愛い! あの子も標準よりおデブちゃんで可愛いっ。どの子に賭けようかしら」

 少女は目の前に立ち並ぶ、ワタモノに心奪われている。その青い瞳はハート型だ。

 ワタモノ――というのは、この国エステルバームの天然記念物だ。

 この国にしか存在しない貴重な生き物である。

 その名に付いているとおり、綿のような毛並みのまんまるで、もふもふした生き物である。

 まあるい綿に短い動物の手足と尻尾と耳が生えたといえばわかりやすいだろうか。

 これらのワタモノとよばれる愛くるしい生き物にはいくつかのパターンが見受けられる。

 ワタネコ、ワタウサギ、ワタイヌ、ワタネズミ、ワタブタの五種類だ。

 外見が違うだけで能力的には皆同じだ。

 それぞれの体毛は柔らかそうなパステルカラーで見ているだけでも癒される。

 個体差はあるが、ほぼ普通の猫と同じくらいの大きさだ。ただし、とてもまるい。

「どうして天があなたにギャンブルの才能を授けたのか、まったくもって謎です」

 少女の隣でワタモノたちを眺めながら、落ち着いた声でそう言うのはエリーアスという青年だ。

 すらりとした四肢のうえ長身で、良く言えば冷静な、悪く言えば冷たい印象を与える男だ。

 理知的でどこか神秘的なツリ目は菫色で心の底を見透かされてしまいそうだ。

 嫌味のない程度に高さのある鼻梁、男性らしく引き締まった唇は仄かに色気が漂う。

 そして、さらりと流れる銀髪が頬にかかり右の方だけ少し髪が長い。

 耳が長ければエルフと言っても通じるほどの美貌の持ち主だ。

 だが整いすぎた顔立ちはどこか人を寄せ付けない冷たさがある。

 そんな彼は一部で氷の貴公子と呼ばれている。

 なぜなら、彼はめったに笑わないからだ。

 常に無表情なのである。

 確かに美形と言っても過言ではないが、無表情のまま顔の筋肉が固まってしまったのだという、皮肉も込められている。

 しかし見目良い彼は若い女性に人気がある。

 この会場に来てからも、女性たちの目はちらちらと彼を目で追っている。

 いかにも従者ですと言わんばかりの、地味な服を着ているにも関わらずだ。

「なあに? 嫉妬してるの?」

 そんな自分より頭一つ背が高い彼を、青い瞳で見上げながら問うのはユージェニーという少女だ。

 まもなく二十歳になろうかという彼女は、大人と言うにはまだ少女としてのあどけなさが残っている。

 町娘より少し良い仕立ての服に身を包んだ彼女は、見た目は可憐だ。フード付きの外套を羽織っている。

 癖のない艷やかで真っ直ぐな銀髪は眉の上で揃えられ、それ以外の部分は腰まで届くゆるい三つ編みにしてまとめられている。

 眉は短めで、爽やかに晴れ渡った澄んだ空のような青い瞳は、好奇心旺盛に見える。

 可愛らしい唇は咲きかけの薔薇の蕾のようだ。

 町娘のような格好をしているが、どこか隠しきれない高貴な雰囲気がちらほらと見え隠れする。

「いいえ。呆れているんです」

 はあ、と溜息を吐くが相変わらずエリーアスは表情一つ崩さない。

 無機質、という言葉が当てはまる。

「なにに?」
「あなたとこの会場にいるすべての者に」
「なんでよ。聞き捨てならないわね」

 ユージェニーは可愛い口を少し尖らせ、軽くエリーアスを睨んだ。

(ほんとこいつって、黙ってれば美形なのに、口うるさいのよね。そのくせ有能だから言い返してもいつも返り討ちにあっちゃうし)

「第一に、ここで行われていることは違法です。あんなに愛くるしい天然記念物をレースに参加させて賭けをするなど、無粋の極みです。『可愛いものは手元に置いて愛でれば良い』のですよ」

「そりゃそうだけど、ワタモノレースは、この国じゃ知らない者はもぐりって言われるくらい、暗黙の了解でずっと昔から続いているじゃない。今更だわ」

 そう、二人が今いるこの会場は、ワタモノの勝敗を賭けたワタモノレースの非公式会場なのだ。

 ワタモノレースは毎月場所を変え開催される。

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護衛騎士は~
~桜猫*日和~